30: ◆uCwA0MUuYI
2012/12/19(水) 15:50:19.81 ID:XBB4n3WAO
「私家だとあんま勉強しないんだ。だから期間中も早くでないと、時間無駄にしちゃうし」
「あー、それは私もだ。家とか寝るよね」
「ね」
そういえば、とキリカ
「昨日さぁ、手芸部の話したじゃん?」
「あぁ、うん」
「作ったもの持ってきたんだ」
「えっ、ほんとに?」
「ほら」
キリカが取り出したのは
白と黒のパーツで構成されたつぎはぎのウサギのぬいぐるみ。
何処か見覚えのあるぬいぐるみだ。
「えっ……あっ。コレってもしかして」
「そ、アレだよアレ。こないだ拾ったげた……」
「キリカ、ストップ。」
「?」
あの黒歴史キーチェーン……
「見て覚えたんだ! どうだい、なかなか上手くできてるとは思わないかい?」
あの一瞬の間に、覚え込んでしまったのだろうか。
だとしたら、スゴいことだ。
普通の人にはなかなか真似が出来ないだろう。
……あ。
「……確かにそっくり。……うん」
「どうかしたかい? ……あっ」
キリカが私の鍵の物と比べる。
大きさやデザインの意匠は、確かにそっくりだ。
でも。
私のは、白と黒ではなく、白と灰なのだ。
「……やらかした。色が違ってるね」
「いや、この際色はどうでもいいよ。スゴいよキリカ! あの時の一瞬で覚えちゃったの!?」
「ふふ、まあね」
「これもニードルフェルトなの?」
「そうだね。縫い目のあたりは手縫い入ってるけど。」
「細かいところを手で?」
「うん、まあね」
「スゴいなぁ……」
少し誇らしげなキリカ。
そうすると、徐に定期入れを取り出して、そのチェーン部分にそれをつけて見せた。
「コレでお揃いだね、ほら!」
「あっ、そうだね!」
キリカとお揃い。
お揃い。その言葉が、なんだかむず痒い。
早起きは、三文以上の徳となった。
キリカは次の駅で降りていった。
なんだかいつも以上にはしゃいでいる様子で、いつまでも私に手を振っていた。……けど。
……あぁ、前を見ないから。
電車は男の人に平謝りするキリカを視界の端っこに追いやり、私を次の駅まで連れて行ったのだった。
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