23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/24(月) 02:30:51.20 ID:g/rAwmazo
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それは古い話だった。発端は、美国織莉子が魔法少女の相互扶助機関の設立を考案した所まで遡る。
かねがね、美国織莉子は魔法少女に秩序を齎したいと考えていた。
地域単位ではある程度結託する事もあるとは言え、総じて魔法少女の世界は、その言葉の響きからはかけ離れた弱肉強食に終始していた。
その強大な力の源にして存命の手段でもあるグリーフキューブを巡り、少女らは常に争っていた。
魔法少女たちは魔法少女システムの変容により、旧世界よりも遥かに長い平均寿命を得ていた。
概して魔獣は集団で姿を現し、それに抗するため魔法少女は嫌でも徒党を組むことを迫られ、それが結果として総体としての延命を可能にしていたのだ。
それ自体は歓迎するべきことだが、実際にはそれはさらなる悲劇の始まりに過ぎなかった。
集団としての生存競争の開幕。
誰しも死にたくはない。自らの存在が綺麗さっぱり消えてなくなる円環の理になど――少なくとも進んで連れて行って欲しがるような娘はそうはいない。
それがために誰もがキューブを独占したがり、それを巡って争いが、端的に言ってしまえば殺し合いが、世界の至る所で起こった。
その中には、単なる生存本能からではなく力の行使、つまり魔法少女の強大な力を思う存分に振いたいがためだけに同胞を殺すような不埒者もいたようだ。
そしてそれは、魔法少女の集団化によって一つの「戦争」という領域にまで成り果てていた。
美国織莉子は考えた。必要なのはキューブの安定供給の実現と、危険な魔法少女・集団を排除するための仕組み<System>だ。
古くから、そういった考えを持つ魔法少女は少なからずいた。
しかし、大抵はそれを煙たがる当の「危険な魔法少女」とそれを率いる集団によって、彼女らは物言わぬ肉塊へと変じさせられる破目となった。
出る杭は打たれるし、出過ぎた杭は引き抜かれるものだ。
だが、それでもなお美国織莉子はそれを実行することにした。失敗は――少なくとも道半ばで誰かに斃されることはないだろうという、確信めいたものを抱いて。
因果、即ち魔法少女の基本スペックを決定づける"素養"というものは、様々な要素が複雑に絡み合って決定される。
例を挙げれば親の重ねた業であったり、本人が渇望する叶わぬ夢想であったり、またその性格に起因したりする部分もある。
その点においては美国織莉子も同様で、様々な条件が絡み合った結果、彼女は見滝原市においては――まどかの魔力キャパシティの一部を継承したほむら以外で――最高の素養を持っていた。
つまるところ彼女は強く、魔法少女との戦闘においても堅実かつ嫌らしい戦法で幾度もの勝利を収めていた。
また、彼女を全力で守護する騎士の存在もあり、気の置ける親友たちもいた。
これほど恵まれた状況だ、当時の美国織莉子にはことを起こさない方が間違いであるように思えたのだろう。
また、理想主義者の巴マミの存在もその動きに拍車をかけた。彼女もまた、魔法少女の軍団が日々殺し合い、憎しみ合う現状に悲しみを覚える心優しき少女だった。
カリスマ性に溢れ人を束ねる力に長けた織莉子と古くからこの地に根を張り近隣の魔法少女とも太いパイプを築いていた巴マミが結託すれば、不可能など無いように思えた。
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