過去ログ - ほむら「Raven"S"」
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42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/30(日) 22:59:31.87 ID:dlefWGSko
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予言書。それはアポカリプティック・ビーストの顕現を予見する、美国織莉子の最後の遺物だった。

「ずっとずっと書き溜めていたものを私が継承した、というわけだよ」

美国織莉子の魔法は、未来予知だった。

曰く、「時間」とは「いま」の積層と定義される。ボール紙のように連なった「いま」という薄壁の連なりが、「時間」という総体を為しているのだと。

織莉子の能力はその積層物に穴を穿ち、その先に在る薄壁の何枚かを覗き見するものだ。
魔力消費量と比例して精度を増し、より遠くの未来を見通すことが出来るその魔法を、ほむらは散々に出歯亀と揶揄したものだった。

それが今こうして巨大な魔獣の出現を知らしめているのだから、これは大いなる皮肉だ。

また、基本的に織莉子の視た未来像は他のメディアに書き写すことが出来ない。
魔力の産物たるそのビジョンはソウルジェム内にのみ保存が可能な代物で、彼女の存命中にそれを他のハードに移すことは出来ず終いだった。

織莉子は死の間際にこれをキリカのジェムに継承させ、キリカは長年をかけ電子媒体に手動でまとめあげた。

データ量にして数十ギガバイトに達するそれはテキストオンリーで、図表は一切含まれていない。これは驚異的な量だと言えた。

「なぜ一般公開をしないの?L.O.Lが組織だって動けば、打倒は無理でも近隣住民を避難させることくらいは可能でしょうに。
 どうしてわざわざ、貴女は流言飛語を飛ばす形でそれを書き込んだのかしら?
 なによりも、そういった"システム"による魔法少女の統治こそが、美国織莉子の悲願ではなかったかしら?」

ほむらのもっともな疑問に、キリカは瞳を悲しみで翳らせた。

「途中で考えが変わった、と言うべきかな。"あんな事"があって、強力すぎる統制プログラムは魔法少女の悲劇を一層助長するだけだと思ったんだよ、織莉子は」

だから、と言ってキリカは説明した。

L.O.Lは魔法少女を指揮しない。
世界中に散らばる異能集団たる魔法少女を一手に束ねるL.O.Lは、ほむらが考える以上に強大な存在たりえる。
もしもそれが独自の指揮権を持てるようになれば、それは魔法少女による社会秩序への反逆すらも可能としかねない。
"法の光"協会は、飽くまでも中立の立場から魔法少女の動向を監査する、司法機関的な役割に専心しなければならない――というのが美国織莉子の最終回答だった、らしい。

「だから、これは私のごくごく個人的な活動なんだよ。織莉子っていう、私にとって一番の人の最後の頼みを実行するっていうね。
 普通だったら現地の子たちと協力する程度だけど、今度はいかんせん東京だからね、さすがに全住民を避難させるわけにいかないし。
 それで、唯一"アレ"に対抗しうる魔力キャパシティを持つキミを誘い出したってわけさ、お察しの通りにね」

これで疑問の一つは解けた。キリカがアポカリプティック・ビーストの襲来を告知できたのは美国織莉子の遺産の賜物だったわけだ。

「それで、貴女はどうしたいのかしら?」

言わなくとも、答えは分かりきっている。

「キミと協力して、アポカリプティック・ビーストを"撃破"したい。報酬は、全世界で通用する正式な戸籍情報だ。
 残念ながらグリーフキューブは渡せない。私にとっても、それはとても貴重なものだからね」

報酬はそれで良かった、というよりはそれこそが暁美ほむらの欲するものだった。
銃撃を主体とする戦闘法を用いるほむらにとってみれば、魔力は節約次第でどうとでもなるものだ。
反面、その他の方面に関してはとことん疎く、どうにかこうにか社会の隙間を縫って生きているのが現状だ。アングラ街道まっしぐらと言える。

不器用なのだ、と暁美ほむらは自身をそう分析する。

だから尋ねた。

「それで構わないわ。私も、貴女に無理難題をふっかけるつもりはない。ただ、もう幾つか答えて欲しいことがある」

「まあ、答えられる範囲だったらね」

ほむらは身を乗り出す。

「まず一つ。貴女、どうやって生計を立てているの?」

それが一番訊きたいことだった。どういうルートを用いているのかは分からないが、彼女が偽の身分証を用意できるような地位にいるというのは察した。

しかし今のご時世、勤労なしには生活できない。
一般人には到底手の届かないほどに高級な"四脚の肉"をぱくつけるほどの資金を、いったいキリカがどうやって得ているのか。



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