過去ログ - ほむら「Raven"S"」
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41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/30(日) 22:58:08.47 ID:dlefWGSko

長年生きているせいでとうの昔に戸籍が消滅した暁美ほむらは、ありていに言ってしまえばあまり金がない。
無国籍自由人と言えば聞こえは良いが、現在においては何をするにも個人認証が必要とされる。
ある個人が、彼ないし彼女自身であるという事を証明できない限り、その人物はコンビニでガムすらも買えないのだ。
戸籍もなく静脈登録も行っていないほむらは、厳密に言えばこの世界には存在しないものとして看做される。

呉キリカとて、それは同様の筈だ。

アダルトサイトを複数運営することでようやく糊口を凌いでいるほむらの身としては、どうしてこうまでも生活水準に差が生じているのか訊き出す必要があった。

「いやいや、本当さ。織莉子の遺言だもの。人倫の道に背くような真似はできない。それに反することは天地新明に――いや織莉子に誓って、あり得ない事だ」


ごくり、と喉を鳴らす音がした。

ほむらのものではない。その背後の、やや下方から発せられたそれは、先ほどキリカが助けた少女の口腔の奥から生じたものだった。

それに気付かずにさらにキリカを問い質そうとするほむらを押し退けて、赤毛の少女が大声を発した。

「すっげぇ!それモノホンのビーフ!?あたし、初めて見た!」

少年のような甲高い声は、半ば個室状態になった店の一角に反響しほむらの耳を鳴らした。

キリカは眉間に皺を寄せ、ほむらを見た。なんでコイツがいる、という意思がありありと見て取れた。

「彼女、呉キリカ最上級監察官"殿"とのコネをつくっておきたいそうよ」

「やだなぁ、そんな下世話な目的じゃありませんって!あたしはただ、その強さの秘訣……みたいなのを知りたいだけっすよ!」

大げさな溜息を吐き、次いでキリカは赤毛の少女に目を向ける。
射抜くような眼差しだった。

「すまないが、今日は帰ってくれないか。これは、ごくごくプライベートな会談なんだ。
 それも、部外者には聞かれたくないほどのね。明日の日中にでも連絡をくれれば、その時に話をしてあげるよ」

有無を言わさぬ口調。それと視線とのコンビネーションは、ほむらが背筋に冷たいものを感じるほどの威圧感だった。

馬鹿な、と思った。最も多くの修羅場をくぐって来た自分が、これほどの恐怖を感じる筈がない。

だがほむらは、すぐにその考えを改める。
ループしていた時間を勘定に入れなければ、キリカはこの世界に現存する最古の魔法少女だ。
この世界でのキャリアの差はたかだか数週間でしかないが、それでも古いものは古い。
恐らく、彼女――呉キリカは、火力・実力の面で魔法少女最強と言える暁美ほむらに唯一対抗しうる存在だろう。

火力それ自体は、魔法少女同士の戦いでそこまでの意味を持たない。となれば、あとは互いの魔力特性と実戦経験を活かした技量面での戦いとなる。
もっとも、気に入らないとはいえ旧知の仲とドンパチしたがるほどには、ほむらは戦闘狂ではなかった。

「そこをどーにか!」

しかし、両の手を勢いよく合わせて嘆願するこの少女には、そのほむらすらも怯ませるキリカの威圧が通用しなかったようだ。
胆が異常に太いのか、単純馬鹿なだけか。どちらにせよ只者ではない。

キリカはしばらく睨めていた目を緩め、再び溜息を吐く。大げさ、というよりも本心からの、まるで肺の空気が全て抜けるかのような脱力したものだった。

「ほむら、話そうと思っていた"プライベート"な話は明日で良いかい?何で、どうしたいか、については今からでも話せるけれど」

ほむらは黙って頷く。彼女にしてもそれほど突っ込んだ内容の話は求めていない。なによりもそちらの方が、顔を合わせる時間が少なくて済むからだ。


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