94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/29(土) 22:37:30.37 ID:3mvhgf9F0
「私、うれしくて涙が出そうです〜! ありがとうございますっ!」
「おいおい……お礼は私にじゃなくて、サンタさんに言ってやれ」
長い髪が跳ね上がるのもかまわず、力強くお辞儀をするイヴ。
しかし私は、ちょっとした困惑顔を作りながら、なおもとぼけて言い返してみた。
もう木場サンタは閉業のつもりだったが……だからといってあっさりバラしてしまうのも、サンタらしくないだろう?
もっとも最初から隠す気なんて無かったけれども、サンタならこう言っておかなくては、といったところだな。
「サンタさんに? ……うふふ〜、了解です〜!」
目を丸くしてきょとんとするイヴだったが……やがて私の意図するところが分かったようだ。
ちょっと迷うようなそぶりの後に、こちらにもう一度向き直る。
「……じゃあ、改めて! ありがとうございますっ!木場サンタさん! ……えいやっ!」
「うわっと……やれやれ、バレてしまっては仕方ないなぁ」
ぴょんと抱きついてくるイヴをあわてて受けとめると、自然と顔がほころぶのが自分でも分かった。
目の前には、抱きしめたイヴの輝く笑顔――人に幸せを届ける、笑顔があった。
「――こんな形でクリスマスプレゼントを届けてくれるとは、やはり本業のサンタには勝てないな。ふふっ……」
「あれ〜? 私、なにもプレゼントしてませんよ〜?」
「……イヴのその笑顔こそが、私にとっては最高のプレゼントだよ」
まったくとぼけた顔して、気づいているのかいないのか……いないんだろうな。
こうして無意識に人を幸せにするのも、イヴの才能だろう。サンタとしてもアイドルとしても申し分ない、彼女の魅力だ。
「……おい、イヴ?」
「……はわわ〜!顔が熱いです〜!」
「まったく……どこまでもかわいい奴め……」
白い肌を紅潮させて慌てふためくイヴだったが、そんなことはお構いなしに、私は彼女をぎゅっと抱きしめかえす。
イヴのぬくもりをこの身に感じながら、私はまた一つ、一生忘れられないプレゼントを心に刻んだのだった――
木場真奈美「木場サンタ?」 了
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