20: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:04:48.37 ID:nzTAcqmZo
2
『あゝ 窓に あゝ オーロラ
眼を見張れ今は 夜が歌うとき』
21: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:05:21.14 ID:nzTAcqmZo
『サイレン uh- 時が止まるよ
サイレン uh- あとわずかで――』
入れ替わり、立ち替わり、みんながステージに走り出ます。プロダクションのみんなと、観客のみんなと、あと、それから、何かわからないもの。気配とか、空気とかテンションとか、そういう言葉で表される、わからないもの。
22: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:05:46.84 ID:nzTAcqmZo
四条さんは、驚くことにほとんど動きませんでした。あずささんはアコースティックギターを演奏していたし、千早ちゃんも身ぶりを交えて歌っていたのに。
――『TrujilloのHaldyn―TorujilloのHaldyn』
23: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:32:19.90 ID:nzTAcqmZo
『一緒に 行きませんか』
24: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:38:03.26 ID:nzTAcqmZo
「ぁ――――!」
雷でも落ちたようでした。
視界が白く埋まり、延髄に甘く重い電流が渦を巻き。
25: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:40:03.46 ID:nzTAcqmZo
――『仕事場は タブー』
そう、タブー。禁忌。でもそれもこの場まで。
熱っぽく歌い上げます。美希ちゃんのコーラスは、ここでは別録のもの。メインMCでもある美希ちゃんの、体力を考えてのことでした。
26: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:42:05.22 ID:nzTAcqmZo
頃合いを見計らって、美希ちゃんがマイク片手に飛び出します。
「まったくぜんぜんなってないの。ロックのライヴを教えてあげる。みんなで声を揃えてウィーワットと叫ぶのだよ。いい? もう一回やってみて。ミキたち後ろに引っ込むから」
27: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:42:33.04 ID:nzTAcqmZo
プロデューサーは、簡単に、まあ良かった、というようなことを言って、すぐに出ていってしまいました。どうせ聞いていないって、わかっているんだと思います。春香ちゃんと千早ちゃんなんて、ハイになってキスしてましたし。
私は、汗も拭かないで、息を荒げて真ちゃんや美希ちゃんと笑いあう自分を、ひどく冷静に観察していました。どう見ても、どこから見ても、私もライブ明けでハイテンションです。
それを自覚して、ふらつく脚で立ちあがり、鏡台に腰をかけて水を口に運ぶ四条さんへ歩み寄りました。四条さんはすぐに私に気が付いて、微笑んで何かを言おうとするのに、飛びかかって首にすがりつき、ぐいと引きよせて妨げます。無我夢中で、感触なんてわかったものじゃない、やりかたもよくしらない、唇をぶつけるだけのそれ。
28: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 13:43:47.81 ID:nzTAcqmZo
「ひゅー! 雪ぴょんやるぅ→!」
「色バカが増えた……」
四条さんの持っているペットボトルから、水が流れて、私たちの服ににじわ、と染みが広がります。
29: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 14:04:51.18 ID:nzTAcqmZo
3
30: ◆3feiQFueVc[sage saga]
2012/12/26(水) 14:05:22.77 ID:nzTAcqmZo
ライブのあとの空気というのは、いわゆる『あてられる』ものがあって、そこであったことは、たいていおぼろげな、現実感のない、あるいはあっても言質とするには余りにも不確実な、そんな曖昧さがあるのです。
それにしたって、私がそんなことにかこつけて、四条さんの唇を強引に奪ったのは変わりないのですけれど。
でも、いいんです。ややこしく考えていてもぐるぐるまわるばかり。だったらもういっそ、好きだって、それだけで、そんなくらいのことで。きっとそれだけで。
どうしようもなく、私は、強くなってしまうのですから。
隙を見つけては、四条さんと肩が触れるほど近くに座ったり、どちらからともなく、髪や指先に触れ合ったり。
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