過去ログ - 雪歩「たかゆきはよ。はよ」
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189: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/21(木) 22:05:34.59 ID:Hs7ywa9Co

「長浜らぁめん、博多とんこつ、久留米らぁめん、と……つけめん、札幌らぁめん、魚介とんこつ、みそ、しょうゆ、一通りは巡りましたか。やはり屋台の本場だけあって、なかなかの賑わいでしたね」
「もう覚えてません」
「無理をすることはありませんでしたのに」
「してませんよ……する前に、全部食べてくれましたから」
以下略



190: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/21(木) 22:06:22.39 ID:Hs7ywa9Co



191: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/21(木) 22:06:50.12 ID:Hs7ywa9Co

 何度目の夜のことだったでしょう。
 煙草の、のどに貼り付くような煙にも、大分慣れました。新しく購入したヴォーグを銜えて、海の見える窓に、身を預ける私のことを、私は後ろから見ています。

「貴音さん?」
以下略



192: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/21(木) 22:08:18.15 ID:Hs7ywa9Co

† † †

「おお、何だ、これは? 羽が……忌まわしい白い羽が……くそう、地獄の火が消える!
 悪魔ども! この、役立たずの、芋虫め! もっと炭をくべろ! 火を吐け! ああ、もうすぐだっていうのに! もう、すぐおれの勝ちだっていうのに!
以下略



193: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/24(日) 23:37:31.84 ID:8o/7yNbjo

「四条さん、海を、見に行きましょう」
「となると……原稿を、仕上げてしまわなければなりませんね」
「お仕事、ですから」

以下略



194: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 00:03:27.08 ID:tvkmI4vQo

 翌日。原稿と手紙を、雪歩と並んで仕上げてしまいます。取材のことを、彼女と語らい、思い返す時間は、とても愉快な思いでした。

 さらに翌日、郵便局まで出向き、手紙を投函します。雄大な桜島は、その頂から今日も白煙を優雅にたなびかせておりました。


195: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 00:04:18.63 ID:tvkmI4vQo
――『前略――
    澄み切った空に、震える寒月も一層冴え冴えとして見えるこのごろ、いかがお過ごしでしょう

か。事務所の者の活躍を目にするにつけ、心のふるさとである皆やあなた様に、遠く九州の地より思い

以下略



196: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 00:05:29.06 ID:tvkmI4vQo
あー
やり直す


197: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 00:05:56.55 ID:tvkmI4vQo
――『前略――
    澄み切った空に、震える寒月も一層冴え冴えとして見えるこのごろ、いかがお過ごしでしょうか。事務所の者の活躍を目にするにつけ、心のふるさとである皆やあなた様に、遠く九州の地より思いを馳せております。先日などは、大雪で大変苦労されたのではないでしょうか。こちらでは雪はあまり降りません。甍を争う家並みに薄く灰の積もった光景も、風情のあるものでございます。
    このたび、私こと四条貴音、このような有情の裁量取り計らい下さいましたあなた様に、告白致したいことがありこうして筆を執った次第です。

    私は、かねてより萩原雪歩に懸想して居りました。
以下略



198: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 00:06:23.71 ID:tvkmI4vQo
    恐らくは、私のこの答えも、人に身勝手と、逃避であると、揶揄されることでしょう。私とて、これを最良などとは思えません。私のわがままに雪歩を巻き込んでしまうこと、それを思うだけで臓腑が千々に乱れるのです。
    しかしそれをおして、そのいざないは魅力的でした。

    雪歩は、それでも良いと言ってくれます。
    それで良い、と。
以下略



199: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:00:14.01 ID:tvkmI4vQo

 二日かけて、雪歩と語り合いました。朝に日に、なにくれとなく。
 不思議と心は凪ぎ、あれほど私を苛み、雪歩に汚れを付けた色欲も鳴りを潜めています。

 手に手を重ね、指を綾めて、いとしいその名を舌に乗せる、それだけのことが、こんなにもこの胸を満たす。
以下略



200: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:00:54.14 ID:tvkmI4vQo

 ある日、街に出向いて地酒を一本、買い求めます。

「雪歩、月見酒は如何ですか」
「……そうですね、ご一緒します」
以下略



201: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:01:40.57 ID:tvkmI4vQo

「ふわふわです……」
「ええ」
「貴音さん……どうして、いつも泣きそうな顔で……するんですか?」

以下略



202: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:33:10.86 ID:tvkmI4vQo

 岬は寒風吹きすさび、眼下には錦江湾が、かすかにけぶる視界に広がります。
 携帯電話が、懐かしいめろでぃを奏でました。
 こうして連絡が来るのを、心のどこかで待っていたのかもしれません。

以下略



203: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:33:44.45 ID:tvkmI4vQo

「敵など……ええ、居りません。けれど、幻であっても、まやかしであっても、私の見ることができるのはそれだけでしたから。
 ……萩原雪歩という幻は、とても美しく光を放っています。そう、正しく幻想的に」

 袖を引くので、雪歩に電話を渡しました。
以下略



204: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:34:16.09 ID:tvkmI4vQo

「あなた様? あまり雪歩をからかわないでください……私、恥ずかしい……」
「とにかく……三時間もすれば、私もそこに着きます。……プロデューサーとして、アイドルに命じます。今すぐ、宿に帰りなさい」
「おや……三時間。ふふ、随分と、足の速い。……私の手紙を、見て頂けたのですね。
 プロデューサー……いえ、あなた様……あなた様は、とても、優しい方です……ずるいことを言いましょう、あなた様。
以下略



205: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:35:02.12 ID:tvkmI4vQo

「貴音さん」
「はい」
「愛しています……『行こうファウスト、地獄へ』」
「嗚呼、愛しい雪歩――『時よとまれ、貴女は美しい』」
以下略



206: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/25(月) 01:35:52.64 ID:tvkmI4vQo

 落華。

 つないだ手の温もりと、身を切る冷たい風の中、ひらり、視野を横切る灰は、風花に似て。

以下略



207: ◆3feiQFueVc[saga]
2013/02/26(火) 03:16:39.21 ID:AORtwfCuo
おしまい


208:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/02/26(火) 12:27:18.54 ID:TiVrwfiao



209:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/02/26(火) 14:10:04.10 ID:c/fYB/PSO



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