221:杏子編第四章 ◆KbI4f2lr7shK[sage saga]
2013/07/28(日) 00:40:27.61 ID:/KE04hO/0
「しかもそれ、一年以上前の話よ?今はどうなっているか考えるだけでも恐ろしいわよ……」
マミは深い溜息を吐いた。いかにもキュゥべえが執着しそうな人材だ。寧ろ今この場に現れないのが不気味だ……。現れたら速攻ぶっ潰すけどな。
「本当にほむらはキュゥべえを知らないのか?」
「それは間違いないわ。ちゃんと確認とったし、会ったら私かあなたに教えるように言ってあるもの」
そこまでしてるなら、ほむらは本当にキュゥべえを知らないだろう。
一先ず安心する。知らないうちに契約している、なんてことが起こる可能性は少なそうだ。
「……ほむらを魔法少女にさせる気はねぇんだよな?」
キュゥべえの言うことが本当ならほむらは誰よりも強い魔法少女になれるだろう。
ソウルジェムの仕組みをしっているから契約に対して消極的だが、それでも仲間が欲しいと考える気持ちがどこかにあることを恐れていた。
「ずっと眠っていた子に、どうして戦わせたいと思うのよ……」
マミは辛そうに言った。
ほむらをやけに気にかけているとは思った。だけどそれは昔馴染みという理由だけじゃないのかもしれない。
もっと深刻な……そう罪の意識に苛まされている。そんな風に見えた。
「ならいいさ」
ほむらには普通の少女として生きて欲しい。それがあたしとマミの共有する感覚だと知れただけで充分だろう。
「あいつはこんな世界に来るべきじゃない」
初対面の相手に怯えるほど気が弱いんだ。身体だってずっと寝込んでいたから強くない。そんな奴が無理して戦う必要なんかないさ。
「うん。私もそう思う」
マミも頷いた。
話に一区切りついたのか、ほむらがあたしを見ている。呼びたいけど遠慮している顔だ。すっかりあたしに頼る癖が着いたらしい。おちおち離れられもしない。
「ふふ。行ってあげないの?」
からかうように笑うマミ。他人ごとだと思って楽しんでやがるな。
「はぁ。仕方ねぇな」
返事もそこそこに歩き出す。マミの反応は少々癪だが、不安げなほむらを放っておけない。
ほら……あたしが来るのを確認しただけで嬉しそうにしてさ。こんな風に懐かれて、突き放せるわけねぇだろ。
頬が緩むのを自覚しながら、あたしはほむらの頭を撫でるのだった。
ずっと忘れていた温もりがあった。求める理想の形があった。想いを共にする仲間が居た。
一度はバラバラになったそれらを繋ぎ止めたのは、純粋に慕ってくれる同じ年頃の少女。あたしと同様で、多くの物を一度に失った、ほむらという存在だった。
そして、あたしたちにとっては平穏な世界の象徴でもあったんだ。
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