44: ◆2gMnW4GmGpwP[sage]
2013/01/12(土) 08:31:34.68 ID:7o9MZzi50
「って、そんなことはどうでもいいのよ。…鹿目まどか」
振り払うように、真剣な声音を作ったほむらちゃんと正面から視線が交わります。
まるで見透かされるようなその眼に、わたしは緊張します。
「あなたに問うわ。“自己犠牲”は尊いと思う?」
わたしの代わりに概念化した‘ほむらちゃん’のことを言っているのだと分かりました。
そんなの分からないよ。
わたしはほむらちゃんに消えて欲しくなかった。
ほむらちゃんには孤独の世界で生きて欲しくなかった。
もうこれ以上、わたしの為に身を削って欲しくなかった…。
わたしを見る‘ツインテールのほむらちゃん’が顔をしかめます。
不機嫌なような、傷ついたような、そんな表情でした。
「気づかないの?…あの‘私‘と同様のことを、あなたはしたのよ」
ハッと気が付きます。
頭に浮かんだのは、赤いリボンを胸に抱いて独りで咽び泣いていたほむらちゃんの姿でした。
「私は…あの‘私’は嬉しくなかった…っ」
今まであまり変化が無かった、‘ツインテールのほむらちゃん’の声が揺れます。
「勝手だと言われても、それでも…っ。それでも私は‘まどか’に、あなたに人として生きて欲しかった!」
――それでも、あなたに人として生きて欲しかった…っ。
わたしが居ない世界で、泣きながらほむらちゃんが零した言葉が励起されます。
もう曖昧になった時間軸の記憶の中のほむらちゃんもまた、同じことを言っていました。
そしてそれは…‘消えたほむらちゃん’に向けるわたしの気持ちでもあったのです。
「ほむらちゃん…っ」
枯れたはずの涙がまた溢れます。
わたしたちは互いに自分の意思を一方的に押し付けて、自己満足していました。
大切な人の命や存在と引き換えに救われたとして、喜べるはずがありません。
自分を大切に思う人の気持ちを考えろって何度も言われていたのに…結局わたしは最後まで考えが足りていなかったのです。
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