86:杏子編 ◆KbI4f2lr7shK[saga sage]
2013/03/08(金) 20:02:31.41 ID:+Da2g13G0
「………」
少女の唇が開く。音は出ない。
だけど確かに動いて…笑った。とても綺麗で、優しい笑みをあたしに向けていた。
時が止まる。空いていた筈だった少女のもう片方の手に握られた2本の赤いリボンが靡く様子も、流れるアヴェ・マリアも意識の外にある。ただ、あたしと少女の2人だけが世界を共有していた。
この時の心情をどう表現すればいいのだろう。一番近い言葉で言えば感動。
ずっと離れていた妹との再会した、そんな気分だったのかもしれない。
「…暁美さん!?」
帰って来たマミが驚きの声を上げた。僅かに駆けるようにして近づいて来る。
マミの声に呼ばれた看護師も部屋を覗いて、すぐに驚嘆と歓びが病院中に伝播した。
そう…これがあたしと暁美ほむらの出会いだった。
―――
――
―
神の思し召し、なんて不覚に思った出会い。
神様なんて…信じちゃいないのに。
信じたところであたしたちは…あたしの家族は救われはしなかった。
代わりに現れたのは悪魔のような存在だった。
守りたいものを喪ったあたしは神を忘れた。信仰なんて捨てた。そのつもりだった。
でもこの時、やっぱりあたしは聖職者(父さん)の娘なんだって…そう思ったんだ。
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