過去ログ - 京子「萌ゆる百合の花も、枯れれば醜くありけり」
1- 20
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:36:01.58 ID:0s1iP1/no
女同士の恋愛というのはいわば人間関係の相転移であって、本来ならば「有り得ない」ことなのである。
裏返し、ちぐはぐであべこべな間柄。
親友から、思い人へと転換するその瞬間は、もはや何者にも観測しえない、未知なる特異点である。
それはあくる日も、そしてこの日も、結衣を悩ませた。

以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:37:04.04 ID:0s1iP1/no
結衣は京子を抱きしめた。柔らかな肌の感触。髪の匂いに、力を増す両の腕。
「痛いよ」京子は困ったような顔で言った。
結衣はそれを無視した。そして耳元で小さく「好きだ」と、ただ一言、囁くようにして叫んだ。
すると京子は、結衣の腕を振りほどき、二、三歩後ずさりをした。
その顔は赤く上気していた。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:37:44.62 ID:0s1iP1/no
結衣が正気を取り戻す頃には、京子は部屋を飛び出していた。
追いかけないわけにはいかない。

走った。はだしのままの、全力疾走である。不安であったからこそ、風と化した。
―――――――――――――――私は拒絶されてしまったのではないか。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:38:39.09 ID:0s1iP1/no
マンションから道路へと飛び出した京子を、大型トラックが撥ねたのだ。
結衣は、その瞬間を克明に目撃してしまった。
京子の体が横っ飛びに、少なくとも5mは宙を舞って、アスファルトに激突する。
それを、網膜に焼き付くようなスローモーションで、余すところなく、見た。
それは夢だと思った。しかし、一向に回復しない息切れが、残酷にも現実を突きつけた。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:39:34.77 ID:0s1iP1/no
結局、大型トラックの運転手が119番通報し、救急車が京子を乗せて走り去るまでの間
結衣はただ茫然と立ち尽くしていた。
そのうちに膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。




10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:40:18.96 ID:0s1iP1/no
「嘘だ」
救急車やパトカーがやって来た騒ぎに、マンションの住人達が野次馬の如く群がった。
その喧噪はやはり、現実のものである。
まるで早回しのシネマを見るように、結衣の思考は全く追いつかなかった。
つい先程、京子を抱きしめたその腕の感触が、夜の冷たさに麻痺していく。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:40:56.15 ID:0s1iP1/no
「結衣先輩」
ノイズの様にちらついた意識は、ちなつの声に呼び戻された。
「ああ、ごめん。少しぼーっとしてた」
結衣は乾いた笑みを浮かべて言った。その笑みに、ちなつはたじろいだ。
憔悴しきっていたのである。目の下には深いくま。掠れた声。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:41:26.47 ID:0s1iP1/no
「ごめん。もう無理だよ」
そんな結衣の姿を見たあかりは、それだけ言い残し、部室を後にした。
―――――――見るに堪えない、ということだろう。
結衣はあかりの後ろ姿を見送りながら、自らを嘲笑した。

以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:41:54.60 ID:0s1iP1/no
「昨日、京子の病院に行ってきた」
「……」
ちなつは返事をしなかった。
結衣はそれでもなお、咎人が己の罪を告白するように、陰鬱な調子で言葉を紡いだ。

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:42:27.55 ID:0s1iP1/no
京子の容体についてである。
目立った外傷は、ない。
しかし、頭部をアスファルトに強打した事による外傷性のくも膜下出血。その血が前頭葉を圧迫している。
依然として意識不明の昏睡状態。
幸い小脳が機能していることにより、かろうじて生き永らえている。
以下略



47Res/18.34 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice