185: ◆Upzc6141AI[saga]
2013/01/19(土) 00:22:55.83 ID:7yky7XNIO
杏子は再び望遠鏡に目を戻す。
青髪の少女が車椅子の少年を押している。
その少年と対峙する形で立っているのは、その少年の父親だろうか。
何かのケースを渡そうとしている。
そして、その後ろから現れたざんばら髪の少年が。
あろう事か、拳銃を抜き出し。
父親と思わしき男の足下に発砲した。
モデルガンかと思ったが、着弾点の弾痕から察するにおそらくは本物だ。モデルガンであんな威力はまず出るはずが無い。
「うわっ!何だよ、あいつめちゃくちゃじゃないか」
咄嗟にゆまの教育に良くないと思ったのか、杏子は見ては行けないと、ゆまには見えないようにする。
その体勢のまま再三望遠鏡を覗き込む。
ざんばら髪の少年は長い黒髪の少女に頭を抑えられ、強引に謝罪の体勢をとらされていた。
そして、車椅子の少年が撃たれた男からケースの中身を受け取る。
バイオリンだ。
演奏を始めると、周りはピタリと動きを止めて聴き入る。
例の少年は拳銃を後ろ手に持ったまま休めの体勢で直立不動だ。
(マミの奴もエライのとつるんでるねぇ…)
車椅子を押していた青髪は涙を流して聴いている。
その手を見ると、指にはソウルジェムと思わしき指環がはめられていた。
(さてはあいつ……あの坊やの為に契約したな……)
杏子も人の為に願う事から始まった。それは結果としては裏切られて終わる願いになってしまったが。
横にいるゆまは、杏子を助ける為に契約をした。
皮肉な事だろう。
杏子は、人の為に願う事の愚かさを身に沁みるほどに知っているのに。
この子は、自分の為に契約してしまったのだから。
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