過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」 2
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61:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:20:27.56 ID:nNWfOeT40
褐色エルフと男が出会ってからしばらく時間は流れた。既に調査に訪れてひと月が経とうとしていたが、未だに遺跡の門にかけられた魔法を解除することはできずにいる。
 試行錯誤を重ね、これだと思った魔法解除のための魔法を編み出しているものの、全くと言っていいほど成果は上がっておらず、さすがに男の方にも焦りと苛立ちが現れるようになっていた。だが、そんな彼の心を落ち着かせようと、ほとんど自然と彼に用意された部屋に住み着いた褐色エルフが失敗の度に慰めの言葉をかけるのだった。

褐色エルフ「もう、そんなクヨクヨしなくてもいいじゃない。ほら、失敗は成功の元っていうしさ! それにもう何日も部屋に篭ってばかりだしたまには気分転換に外にでも出たら?」

以下略



62:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:21:32.74 ID:nNWfOeT40
 そう、ここしばらく褐色エルフと行動を共にしていた男は彼女が自分以外の人間に認識されていないという事実を発見した。最初は皆がこの少女の事を知っていて放置しているのかとも思っていたが、それは違っていた。
 かといって、本当に幽霊というわけではなく褐色エルフの側からの干渉はできており、実際にその身に宿る血の巡りや温かさを感じ取ることができていた。
 摩訶不思議な少女の存在に未だ解除の方法が見つからないこの遺跡の存在と同じくらい最初は頭を悩ませていた男であったが、途中からそのようなことを考えるのも馬鹿らしくなり、ひとまずは目の前の問題に集中することにして褐色エルフの正体についてはそれが解決してからでも考えることにした。

褐色エルフ「ねえ、お兄さん」
以下略



63:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:22:03.55 ID:nNWfOeT40
 その答えを聞いた褐色エルフは満足そうに微笑むと、

褐色エルフ「うん! やっぱりお兄さんはいい人だね」

 と告げ、外へと出て行った。残された男は彼女が一体何をしたかったのか分からずしばし唖然とするのだった。
以下略



64:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:23:51.90 ID:nNWfOeT40
 そして、ここ数日の疲れからいつの間にか意識を失い眠っていた男。真っ暗な世界が広がるなか、彼はふと自分の意識だけは妙にはっきりしていることに気がつく。
 少ししてこれは夢だと男は把握する。だが、そうわかったところで身体を動かすこともできず、ただ単に意識がはっきりとしているだけの状態、何もすることはできない。いつになったらこの奇妙な夢世界から解放されるのかと思っていると、そんな彼に不意に声をかけるものがいた。

?「……あなたには蘇らせたい人がいますか?」

以下略



65:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:24:40.79 ID:nNWfOeT40
どこまでも女々しい自分の心に呆れ、ため息を吐き出す男。そんな彼に不思議な声は何度も問いかけ続ける。

?「……叶えましょう、その願い。ただし、対象は一人のみです」

男「……本当に叶えてくれるって言うんならありがたい話だよ。代価は何もないのか?」
以下略



66:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:25:07.02 ID:nNWfOeT40
男「……僕、は」

 脳裏に浮かぶ一人の少女。かつて彼の前を歩いていた女性でも、ともに笑いあった仲間でもなく、自分の半歩後ろに立ってずっと背中を見続けてくれた少女。

男「望むなら、願いが叶うのなら……たとえ夢だとしても彼女に会いたい。それがたとえ、この世の理に逆らうことでも。そのせいで、辛い思いをすることになったとしても。
以下略



67:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:25:52.59 ID:nNWfOeT40
 まだ日が昇り始めたばかりの早朝。ほとんどの人は未だ眠りについている。だが、今日はほとんどどころか宿泊施設の外に、まるで人の気配がしなかった。
 違和感を覚えながらも、目を覚ました男は桶に貯められた水を手ですくい、顔を洗った後、日課になりつつある門の解析に向かった。遺跡の地下へと続く階段をゆっくりと進んでいく男。その道中、彼は地下に漂う空気に異変を感じた。

男「……なんだ、これ。魔力の気配を全く感じない」

以下略



68:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:28:09.26 ID:nNWfOeT40
?「あなたが選んだ、願いのもとへ」

 不思議な声がそう告げるとゆっくりと門が開いていく。あまりにも非現実的な光景に思わず唖然とする男。この状況に男が戸惑っているとそんな彼の後ろから一人の少女が現れた。

褐色エルフ「行かないの、お兄さん?」
以下略



69:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:28:40.63 ID:nNWfOeT40
 見ればその空間には中央にぽつんと一つ柩が置かれているのみで他には何も存在しなかった。男の発動させた魔法により照らされた室内の壁一面にはよく見れば過去に描かれたと思われる壁画が存在した。

男「なんだ、これ?」

 壁画にはエルフと思しき長い耳をした者、それから短い耳の人間と思われる者が強大な何かと戦っているような絵が描かれていた。敵の姿は黒く塗りつぶされわからない。だが、その絵だけでもその相手がいかに強大で恐ろしいものかという迫力だけは伝わってきた。
以下略



70:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:29:10.03 ID:nNWfOeT40
褐色エルフ「……あの時と同じ。今、この世界にも黄昏が蘇っている。だから今、この世界には再び導者と救世主が必要なの」

男「どういうこだ? 褐色エルフ、君は一体何を言っている?」

褐色エルフ「ふふ、古いお話しだよ男。かつてこの世界を襲った強大な敵の話しをあたしはしているだけ」
以下略



71:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:29:35.22 ID:nNWfOeT40
男「話はわかった。けれど、それが僕にどう関わってくるんだ?」

褐色エルフ「言ったでしょ、導者は人とエルフを繋ぐものだって。だからこそ、導者の資格には二つの種族を心から愛する者でなければならない。けれど、未だ互いに憎しみを抱いているこの時代にはそんな人間は数少ない。
 そんな中、導かれるようにあなたはここに現れた。ある意味これは運命のようなものだよ」

以下略



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