14:1.5[saga sage]
2013/03/04(月) 20:17:53.23 ID:z17TTo9R0
1.5
同時刻、遠く離れた西の島国。
科学の発展とともに天からの奇跡が忘れ去られていく時代においても、天への信仰厚く信じる人々は少なからず存在する。
一先進国の首都として長きに渡り栄華を誇り続ける大都市は同時に巨大魔術組織のお膝元でもあり、
天への信仰の象徴たる大聖堂は、今日も今日とて堂々と大都市の中に極当たり前のように混じり込んでいた。
大聖堂の名に恥じない荘厳な内部の最奥では、可愛らしい女性の声が室内に響いていた。
「このような場合、日本的に言いければ、『終わりよければ全てよし』かしら」
優しげで快活した声色は実に見事だ。
相手を威嚇せず親しみをこめ警戒感を抱かせない天使の口調に、どれほどの信者が騙されていることか。
(土御門に教わった日本語がまったくもって正しくないと分かっても、直そうとする気配すらない。
…………まあ、指摘したとしても、適当な屁理屈を言うだけだろうね)
『ヒドイ! ヒドイのよ! これだから最近の若者たるは!
この歳になると、新たな語学を覚え直すにも多大な労力を必要とするというにー!!』だのなんだの叫んで泣真似して大騒ぎして、
人のいいウエスタン侍ガール聖人やら、200人規模の戦闘部隊シスター軍団やらその他大勢を巻き込むに決まっているので、指摘なんぞしてやらない。
言ったが最後だ。
眼前の自称・日本語初心者の女狐は、僕を晒し者にするシナリオを瞬時に脳内で描いて実行し成功した上で、
今居る大聖堂の中で大爆笑するに違いないのだから。
「お前もそう思いて? ステイル」
左後ろに待機していた僕に問うために、わざわざ腰をひねり、こちらに顔を向ける。
上目づかいで同意を求めるな。
そのような仕草は、年頃の可憐な乙女が行なうから様になるのだ。
「そろそろご自身のお歳を考えてください、最大主教」
「あらあら。魔術師として一流とて、男してはお前もまだまだよな。
女性に歳の話題を振るなんて無粋の極みでありけることよー?」
「ご助言は有り難いですが、無用なご心配かと。
これでも、僕も英国紳士を自負していますので。レディに、歳と体重に関するトークはしませんよ」
「……ほーう? 『レディに』とな? 中々に良い度胸であるなー? ステイル?」
「はてさて何のことやら。まあ、暫くは月夜でも己の背後に注意を払うとしますよ」
「キーッ! 可愛くない、可愛くないのよ、この実在年齢詐欺少年めー!」
「年齢詐欺について、最大主教だけには言われたくありません」
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