165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 22:15:38.84 ID:D0y2i/Rfo
パパはいつものとおりあたしに対して全く怒っている様子はなかった。忙しいときだっ
たと思うので、面倒だなとは思っていたかもしれないけど。
「いつもごめんね」
いろいろな意味でパパ以上の男と出会ったことがないのは確かだったし、あたしとパパ
の仲なのだ。ごめんって言う言葉以上は不要だった。
いつもと同じで、運転手は後部座席にいるあたしとパパの会話には全く反応している様
子はない。これだけ訓練されている運転手を雇うために馬鹿げているほどの給料を出して
いるのだから当然といえば当然だ。
「もう少し時期を選んでもらえると助かるんだけどな」
パパは苦笑しながら優しくあたしを抱き寄せた。どうも少しはパパに迷惑をかけてしま
ったらしい。でも、そういう意味のことをほのめかすパパに少しむっとしてあたしは言い
返した。
「わざとパパに迷惑かけてるんじゃないもん。時期を選ぶなんてできるわけないじゃん」
「それはわかってるよ。だから今日だってこんなところにいる場合じゃないのに、わざわ
ざ有希を迎えに来たんじゃないか」
そう言われたあたしは、パパに飛び切りの笑顔を向けてあげた。それを見たパパは小さ
なため息をついた。
「時々、パパはおまえの育て方を間違ったんじゃないかと思うことがあるよ」
「そんなに悩まないで。パパは間違えてなんていないよ」
あたしはパパを慰めた。
「で? 話を聞こうか」
「何の話?」
パパがあたしを抱きしめたせいで、あたしは今日の出来事は有耶無耶になるんじゃない
かって少しだけ期待したのだけど、それは甘かったようだ。パパはあたしを抱き寄せただけ
で、それ以上は何もせずにあたしの方を見た。
「池山とかいう高校生の話に決まっているだろ。おまえは彼を刺せって命令したのか」
パパに対しては誤魔化せないことと、言わなくてもいいことの二種類がある。逆に言う
とそれ以外の選択肢はない。いつものことだけど、こういう場合にはそれを間違えてはい
けない。
「・・・・・・あたしがそんなバカなことすると思う? あたしのこと、誰の娘だと思っている
のよ」
「それなら警察に補導されるなんてことをするな。パパの言っていることが理解できてい
るなら、こんな初歩的なミスを犯すはずはないだろ」
パパの言うとおりだった。このあたしが警察に一時的にせよ拘束され最寄の署まで移送
されたのだ。いくら参考人としてとしたってそれはあたしにだって十分に屈辱的な出来事
だった。
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