過去ログ - ビッチ・2
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193:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/09(木) 23:29:47.01 ID:eJmhesKmo

 その朝、奈緒は特に意味のある話をしようとはしなかった。本当に何気ない日常的な会
話だけで、特別に愛情を押し付けてくることもなく明日香への嫉妬心を露わにすることも
なかった。

 これなら別に誰に聞かれても差し支えないような兄妹の会話だった。僕はそんな奈緒の
様子に少しだけ安心していた。これ以上この話を突き詰められても僕には何も答えられな
い。明日香に対する僕の感情を置いておくにしても、実の妹のこの種の感情にほいほいと
応えられるわけがない。そういう意味で僕は奈緒の反応に安心した。

 かつて無理矢理引き剥がされた奈緒との再会や、その彼女が長い間忘れずに抱き続けて
いた僕への想いには心を動かされたのだけど、それが異性への愛情という形に変質してい
たのだとすると話は全く異なる。僕が真相を知る前に抱いていた奈緒への愛情は、妹への
ものではない。あの雨の日に偶然出合った美少女への想いなのだ。

 明日香と愛し合い、真実を奈緒から聞かされた今でも妹への愛着は確かに自分の中に存
在しているけど、それは性愛的な意味も含めた異性への愛情とイコールかというと、もは
やそうではないと思う。

「お兄ちゃん、降りないと」

 物思いに耽っていた僕に奈緒が注意した。

「え」

「え、じゃないって。ほら着いたよお兄ちゃん」

 僕は慌てて床に置いていたバッグを取り上げた。

「じゃあね。また明日、いつもの電車でね」

 奈緒が微笑んだ。端正で整っているけど、可愛らしく愛嬌もある奈緒の表情が再び僕を
惑わせた。

「うん。またね」

 僕は締まりかけたドアをこじ開けるようにしてかろうじて車外にでることができた。動
き出す電車の窓から奈緒が微笑んだまま僕に向かって手を振った。

 教室に入るとまた別な悩みが僕を待ち受けていた。兄友が真剣な表情で僕を問い詰め始
めたのだ。いつもなら止めてくれるはずの女さんは何だか恐い表情だ。

「奈緒人、おまえさ」
 兄友が真面目な顔で僕に言った。「奈緒ちゃんと付き合ってるんじゃなかったのかよ」

 僕は何も答えられなかった。こんなところで複雑に絡み合った事態を話すわけにはいか
ないと思ったからだ。

「・・・・・・この前、明日香ちゃんとおまえ、手を繋いでたよな?」

 玲子叔母さんの会社に行くために、明日香が校門まで迎えに来てくれたときのことだろ
う。あのとき、カラオケに行こうとしていた兄友と女さんに僕と明日香は出合ったのだ。

「うん」

「うん、じゃねえだろ。おまえ、あのとき義理の妹と恋人繋ぎまでしてたじゃねえか」

「・・・・・・だから何だよ」

 僕はいらいらして言った。こんな外野のやつらに複雑な僕たちの関係に口を挟まれる理
由はない。

「ちょっと待って。兄友、あんたもいきなりすぎだよ」

 女さんが口を挟んだ。


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