210:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/20(月) 22:39:47.13 ID:ctdSSd06o
「本当に大切な相手を傷つけてまで自分の想いを遂げるべきではないよ」
そう言ったパパの言葉にあたしは凍りついたた。パパは再び過去の過ちを繰り返そうと
しているのだ。
「パパが奈緒をどうこうしたなんて知ったら天国の怜奈が悲しむだろう。パパにはそんな
ことはできないよ」
パパは慈しむように写真立ての中で微笑む怜奈叔母さんの姿を指で撫でるようにしなが
ら言った。パパってひょっとしたら精神を病んでるんじゃないの? あたしは一瞬そう思
ったけど、それよりも根深い怒りがあたしの奥底から湧き出てきて自分でもそれを制御で
きなくなった。
パパにとっては怜奈叔母さんはあたしのママより大切なのだ。そして、今日はっきりと
わかったのだけど、奈緒の方が実の娘であるあたしよりも大切なのだろう。
あたしは笑った。いつもパパとの夜の前に見せる控え目な微笑みではなく、それはもっ
と乾いた笑いだった。
「有希?」
パパが驚いたように言った。あたしの反応が意外だったのだろう。これまであたしはパ
パに対してだけは反抗的な態度を取ったことはなかったから。
今までは奈緒に対しては愛憎が入り混じったような複雑な感情を抱いてきた。飯田や池
山に奈緒をレイプするように命令したときも、半ばはそういう指示をした自分のメンタリ
ティに疑問を持っていた。レイプされることになる奈緒と何食わぬ顔で一緒にいたのだっ
て、最後になって奈緒を襲わせることに迷ったらその場で手を引くように命令し直せば済
むという思いもあったのだ。
でも、もうあたしは迷うことはないのだろう。パパはあたしの愛人であたしの恩師でも
あるのだけどパパの中であたしが一番ではない以上。
パパと奈緒。あたしが愛した二人にあたしは裏切られたのだ。行動しないとあたし自身
のアイデンティティが崩壊してしまう。
パパと別れて自分の部屋に篭もったあたしは再び声を出さずに笑った。奈緒は結局コン
テストで再び優賞することはないだろう。あたしの奈緒への愛情もこれで終わりだ。奈緒
を破滅させるために巻き込む人の数は少ないとは言えないだろう。目標の一つでもあるパ
パはもちろん、周囲の他の大人たちが巻き込まれることも避けられないだろう。
もうあたしはパパの自分に対する愛情に対しては全く幻想を抱いてはいなかった。これ
まで受けてきたパパからの数々の便宜は、あたしへの愛情からもたらされたのではなく、
あたしの身体や性的なサービスの代価に過ぎなかったのだ。これではあたしは風俗嬢と同
じだ。だからあたしは被害が周囲に拡散してももう心が乱れることはない。
この期に及んで手加減をするつもりはなかったけれど、それでもあたしのやり方は暴力
に頼るものではない。必要とあれば男の子たちに暴力を振るわせることに対して全くため
らいを感じないあたしだけど、事ここに及んでも肉体的な暴力ではなく対象者の精神を苛
むことこそ唯一の復讐だとあたしは考えた。
せめて泣ければいいのに。あたしは一人きりの部屋で微笑みを浮べながらそう思った。
その日のうちにあたしは奈緒の家を訪れた。平日で学校をさぼっていたので奈緒が不在
なのはわかっていた。
「学校はどうしたの」
扉を開けた麻紀おばさんが驚いたようにあたしを見た。「奈緒なら学校に行ってるわ
よ」
「おばさんにお話したいことが会ってきたの」
あたしは幼い頃からママを失ったあたしに対して、とても優しく接してくれていた麻紀
おばさんに微笑んだ。
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