238:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/12(水) 23:14:09.29 ID:kCQODl6lo
今朝、いつもの電車で僕は奈緒と落ち合って一緒に登校した。
土曜日にはピアノ教室に行かなかったから、奈緒から実の兄でも僕が好きだと言われた
とき以降彼女に会うのは初めてだった。奈緒はスクールバッグを片方の肩にかけ、手には
何やら紙バッグをさげている。
「おはようお兄ちゃん」
奈緒ははにかんだように微笑んで僕に言った。悲壮な顔で実の兄である僕への愛情を語
ったあのときの表情は全く残っていない。彼女はいろいろとふっ切れたようだった。
「おはよう奈緒」
「今日も天気がよくないね。お兄ちゃん、寒くないの?」
「ちょっと寒いけど、でも平気だよ」
「あの」
奈緒が僕から目を逸らして言った。「あたしはあまり寒くないし」
「うん?」
「よかったらだけど。あの、このマフラー巻いてくれる?」
それで奈緒が片手に下げていたバッグから綺麗に折りたたまれたマフラーを取り出した。
「これって・・・・・・」
「先月のクリスマスのプレゼント用に編んでたんだけど、あたしのレッスンのせいでお兄
ちゃんに渡せなくて」
奈緒はにっこりと笑って僕の首にチェック柄のマフラーを巻いた。編み物にはうとい僕
だけど、編み物でチェック柄を作り出すことの難しさは何となく想像が付く。いったいこ
のマフラーを編むために奈緒はどれくらいの時間をピアノのレッスンから割いたのだろう。
というかマフラーを編むのに時間を割くらいなら僕と会ってもよかったのじゃないか。
冬休み前後はピアノの集中レッスンのせいで奈緒にデートを断られていた僕はふとそう思
ったけど、今はそんなことはどうでもいい。
『有希から電話で教えてもらったの。お兄ちゃんと奈緒は実は本当の兄妹じゃないって。
二人は血は繋がってないって。お兄ちゃんと奈緒は付き合おうと思えば付き合えるんだよ
って』
『冗談だろ・・・・・・』
『冗談ならよかったのにね』
僕の腕での中で悲しそうに僕を見上げた明日香の切ない表情。
『明日香にこんな話しちゃってごめね。あたし、奈緒のママから聞いちゃったの』
『あたしも動揺して誰かに話したくて』
『奈緒の本当のママって、怜奈叔母さんなんだって』
『ああ、明日香は知らないよね。あたしのパパの妹だよ。あたしが生まれた年に、奈緒を
産んでそして事故死しちゃったあたしの叔母さん』
『・・・・・・どういうこと』
『あなたの今のパパと麻紀おばさんは怜奈叔母さんの死んだあと、奈緒を引き取って奈緒
人さんと一緒に育てたんだって』
『・・・・・・じゃ、じゃあ』
『うん、そうよ。奈緒と奈緒人さんの間には全く血が繋がっていないの』
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