246:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/12(水) 23:21:43.37 ID:kCQODl6lo
「あたし、聞いちゃったの」
駅前のスタバで向かい合って座ると女さんは話し始めた。
「あいつを驚かせようと思ってさ。いつもと違う車両から電車に乗ったのね。そしたら明
徳駅から乗ってきた富士峰の中学生の女の子が兄友に話し掛けてて」
後ろから兄友を脅かそうと思っていた女さんは、思わず乗客の背中に隠れた。
『あの・・・・・・突然話しかけてすいません。明徳高校の兄友さんですよね』
顔を赤らめた可愛い子が兄友に話しかけていた。
『そうだけど』
『ごめんなさい。こんなところでいきなり』
『別にいいけど。俺に何か用?」
顔を赤くしたままその子が何かを兄友に話しかけた。電車が陸橋に差しかかり走行音が
大きくなったせいで二人の会話は聞こえなくなった。兄友が何かを彼女に話している姿だ
けが女さんの目にフォーカスされる。
二人の会話が聞こえなかった女さんはずっと兄友とその女の子を見つめていた。電車が
陸橋を抜けたおかげで、女さんは再び二人の会話を聞くことができた。
『有希ちゃんっていうんだ』
『はい。富士峰の中学二年です』
『有希ちゃんの気持ちは嬉しいけどさ。俺、彼女いるんだよね』
『構いません』
『へ?』
『その彼女さんとあたしを比べてもらいたいです。それで兄友さんがあたしの方が彼女さ
んより魅力がないと思われるなら、あたしは兄友さんのこと諦めます』
『いやさ。俺って浮気とか嫌いだし。二股とかぜってー無理だし』
『二股とかじゃなくて、あたしのことを知ってもらうだけでも駄目ですか?』
『いやさ・・・・・・』
『・・・・・・やっぱり女子校のお付き合いとかに慣れていない女なんかには興味がないんです
か』
『そんなこと言ってねえよ。俺の親友にも君の学校の中学生の女の子と付き合ってるやつ
がいるしさ。あいつら、いいカップルだって思ってるよ』
『それなら。一度、ゆっくりお話させてもらえませんか。二人でお話するだけでもいいん
です。前からこの電車でずっとあなたのことを見ていました。初めてお付き合いするなら
あなたがいいと思ったんです』
『いやさ。それ思い込みだから。女子校だから俺なんかがよく見えるだけじゃね? 富士
峰のお嬢様なんかと俺じゃ釣り合わねえしさ。もっと他に君にふさわしい男がそのうち現
われるって』
『だって、うちの生徒と兄友さんの親友が付き合っているって言ったじゃないですか。な
んでその人たちはよくてあたしと兄友さんは釣り合わないなんて言うんですか』
『いやだから俺には彼女がいるし』
そのあたりで明徳高校前駅に電車が着いたため、兄友は有希にじゃあねって言って電車
を降りたそうだ。
・・・・・・これって全然浮気じゃないじゃん。僕は女さんの話を聞いてそう思った。
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