過去ログ - ビッチ・2
1- 20
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/15(金) 23:13:13.46 ID:kwCozKeOo

 お通夜は今夜だそうだった。斎場の場所と時間だけを告げると、多田先輩は他の皆にも
伝えなくちゃと言い残して早々に電話を切った。

 麻季は構ってもらおうと彼女にまとわりついて来る奈緒人の相手をしながら、クローゼ
ットの奥から喪服を取り出した。ワンピースの喪服。真珠のネックレス。香典を包む袱紗。

 全く現実感がないせいか不思議と悲しみも動揺すらも感じない。多田先輩から教わった
怜菜の通夜の会場は自宅からそんなに離れてはいないけど、時間的にはあまり余裕がない。
奈緒人をどうしようか。麻季は博人の携帯に何度も連絡をしてみたけど返事がなかった。
喪服に着替えた麻季が姿見で服装をチェックしていたとき、ドアのロックがはずれる音が
して博人が帰ってきた。こんなに早い時間の帰宅は珍しい。

「博人君、ちょうどよかった。さっきからメールとか電話してるのに出てくれないんだも
ん」

 普段どおりの冷静な声。まるで自分ではなく他人の声のようだ。

「ごめん。近所でインタビューしてたからさ。おかげで早く直帰できたんだけど。それよ
りその格好どうかした? 近所で不幸でもあったの」

「博人君が帰ってくれてよかった。大学時代の友だちが交通事故で亡くなったの。これか
らお通夜に行きたいだけど」

「いいよ。奈緒人は僕が面倒をみてるから。つうか斎場はどこ? 車で送っていこうか」

「ううん。保健所の近くらしいから大丈夫よ。奈緒人、まだ夕食前だからお願いね」

「わかった。亡くなった人って僕も知っている人?」

 知っているも何もない。突然亡くなったのはあなたも知っている怜菜だよ。でも今さら
そんなことを言ってもしかたないし、そんな場合でもない。博人は怜菜のことを知らない
ことになっていた。だから麻季は言った。

「博人君は知らないと思う。あたしの大学時代の親友で結婚式にも来てもらった子。太田
玲菜っていうんだけど、多分あなたは覚えていないでしょ」

 博人は驚いたような表情で目を見張った。やがてその目に涙が浮かんだ。麻季は心を動
かされずに、何重ものフィルターを通しているかのようにぼんやりと博人の涙を眺めてい
た。

「博人君? 何で泣いてるの?」

「・・・・・・やっぱり送って行くよ」

「あたしは助かるけど、奈緒人はどうするの」

「連れて行く。君が帰ってくるまで斎場の前に待ってるから」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice