過去ログ - ビッチ・2
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404:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/23(土) 22:23:35.33 ID:Hrg8o0SYo

「何よ」

「処女だとそうでもないようで」

「ああもうじれったいな。一言で言うと何なのよ」

「それは、つまり」

 酒井さんが言いつらそうに口ごもりながら話しを続けた。

「玲子さん、あの池山とかっていう不良高校生に変なことをされたんですか」

 誤魔化すには真剣すぎる表情だった。多分、彼も自分の大学の後輩が関わっているか考
えるといてもたってもいられないのだろう。あたしは自分の思い出したくもない体験を語
るしかないのか。あたしはため息をついた。

「そうだったんですか・・・・・・。つらいことを話させちゃってすいませんでした」

「いや。気にすることはないよ。無事という意味では本当に無事というか何もなかったん
だから」

「・・・・・・いつまでも無事すぎるのも年齢を考えるとどうかと思いますけどね」

 一生懸命冗談であたしを和ませようとしている気持は伝わってきた。たとえは微妙だっ
たけど。

「うるさい」

「すいません」

 酒井さんが首をすくめた。

「いったい何があったのよ」

「ああ。何かもう訳わかんないですよ。渡は逮捕されちゃうし取材や原稿はどうなっちゃ
うかわかんないし」

「とにかく落ち着いて話してみなよ。それにうちの原稿はどうなるのよ」

「ああ、そうでした。すいません」

「すいませんじゃなくてさ。来週締め切りじゃんか。何とかなるの」

「無理ですね。この状況では」

「さらっと言うなよ。怒られるのはあたしなんだから」

「上司に怒られる方が若い男に襲われるより心配なんですね。玲子さんらしい」

「どっちもやだよ。いいから何があったか話してよ」

「・・・・・・そうですね」

 一度話し始めると酒井さんの話は止まらなかった。



 それは思っていたより複雑な話だった。それは酒井さんが平井さんから仕入れてきた話
で、あたしも平井さんから多少のことは聞いていたのだけど、酒井さんの情報の方がはる
かに詳しかった。音楽雑誌の編集者のあたしより雑多な仕事を強いられているとはいえ、
基本的には調査報道のジャーナリストを目指していた酒井さんの方が情報を入手する能力
に長けていたようだった。



 それは女帝という名称でこの界隈の子どもたちに知られている中学生の女の子に率いら
れているグループ。その名はビッチ。明日香を襲ったのもあたしを襲ったのも、全てはそ
の女帝の仕業だというのだ。

「渡の馬鹿野郎が。あいつはどうもそのビッチとかいうグループの顧問みたいなことをし
てたらしいんですよ。何やってるんだあのバカは」

 この人は本当にあの店のマスター好きだったのだろうなとあたしは思った。あの渡とか
うマスターが過去を清算して更正したことが酒井さんにとっては嬉しいことだったのだろ
う。でもその思いは裏切られたのだ。襲われたあたしに遠慮して心境を言おうとしない酒
井さんから、あたしはここまでは理解することができた。


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