過去ログ - ビッチ・2
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405:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/11/23(土) 22:24:07.27 ID:Hrg8o0SYo

 臨海部にあるマンションから出てきた僕はまず玲子叔母さんに電話したけど、その電話
には何の反応もない。奈緒に電話したい気持を抑えて僕は次に明日香に電話した。

 明日香は電話に出ない。今日は平日だ。学校に行っているんだろう。校内では電話に出
られなくても不思議はない。それに明日香が電話に出たとして、僕は彼女に何を話すつも
りなんだろう。今日、お姉ちゃんに聞いたことを報告することはできる。僕の過去のこと
とか有希のこととかを理解させるにはそれが手っ取り早いだろう。でも本当に僕はそんな
ことを明日香に話したいのだろうか。

 いや。僕と奈緒の過去や父親のこととか、お姉ちゃんが教えてくれたことは僕にとって
はすごく重く重要なことだ。それは間違いない。でも、こと明日香との関係において僕が
今話したいことは多分そういうことではない。僕は思っていたよりダメージを受けている
ようだった。

 奈緒と明日香と玲子叔母さん。浮気性の男の典型のようだったけど僕はその誰にも恋を
しているようだ。ただ、今の僕がお姉ちゃんが話してくれた昔の話があまり気にならない
ほど、僕の心を悩ませていたのはやはり明日香と親友の兄友との関係のことだった。

 明日香の兄友との行為は僕と付き合う前の話だったので、これは不貞とか裏切りとかで
はない。それでもこれまで何度も繰返して考えて悩んだとおり、自分の彼氏を裏切って人
の彼氏を誘って寝るという行為を、明日香が平然としていたということに対して僕はショ
ックを受けていた。

 これは逆説的に言えば、僕は自分で思っていたより明日香のことが大切で好きだったと
いうことなのだろう。本当に正直に考えれば、明日香が僕のことを考えていろいろ不評を
買うような行動をしてくれたことに感謝してくれたことに僕が感謝したことが僕たちの付
き合いの出発点だと思っていた。

 でも、それだけじゃなかったのかもしれない。奈緒のことを含めて考えてもなお、僕は
本気で明日香に惹かれていたのかもしれない。そうでないなら、僕が今、お姉ちゃんから
聞かされた自分のルーツのことがあまり気にならないほど、明日香のことばかり考えてい
るわけがない。

 いずれにしても、この時間では今日はもう学校に行ってもしかたがない。明日香は不在
だろうけどとりあえず僕は自宅に帰ることにした。

 自宅の最寄り駅まで戻ったとき、僕は女さんに声をかけられた。

「奈緒人君」

「あ。女さん」

 しばらくはどちらも声を出せなかったので、見詰め合ったまま僕たちは沈黙していたま
まだった。傍から見たら恋人同士の沈黙のように思われたかもしれない。

「今日、君って学校に来てなかったね」

 女さんが沈黙を破って節目がちに言った。


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