423:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/18(水) 00:20:44.13 ID:owlu8LCeo
それでもナイフで突かれるような痛みはいっこうに消えない。自分の心が何で自分の意
思に従わないのか考えると、認めたくはないけどおそらくその理由は二つあるようだった。
一つは兄友への劣等感だった。あいつは見た目も成績もいいしスポーツも得意だし、し
たがって女の子にも人気がある。それだけでなく、いわゆる落ちこぼれと言われるような
生徒たちとも自然と仲良くできる。ある意味、男子高校生としての理想型みたいなやつだ。
僕も最初はそんな兄友の親友であることに自分のアイデンティティを求めている時期が
あったのだけど、その感情が今では負の方向に作用しだしたのだろう。それは兄友に対す
る劣等感だ。
僕が入学して好きになり告白までした女さんは、僕ではなく兄友を選んだ。そして僕が
本気でプロポーズした明日香は、前の彼氏を裏切ってまで兄友と関係を持つことを選んだ
のだ。明日香は僕のことを好きになってくれたし時期になっているとは言え女さんも僕と
付き合っていればよかったと言ってくれた。でも、卑屈に考えれば二人のその反応は兄友
と関係したあとのことで、最初は二人とも兄友に惹かれたのだ。つまり僕は二番目の男と
いうことになる。そう考えてみれば僕の悩みは単純なことで、要するに兄友への嫉妬や劣
等感がその悩みの主成分なのだろう。
そして二つ目の理由。
僕は明日香に対して、無意識ながら優越感を感じていたのかもしれない。僕のことを心
配して身を賭してまで尽くしてくれたツンデレの明日香の行動に、僕は感謝して感動まで
したのだけど、その実その明日香の行動原理が僕のことを好きだったことに由来していた
ことに関して、上から目線で感謝していたのではないか。明日香が僕自身が戸惑うほど率
直に僕への行為をむきだしにしたことに気をよくして、上から目線で告白したのではない
か。
その根拠のない優越感は明日香と兄友の関係を知ったことにより揺らいでしまった。
それでもそれ自体は多分克服できないことではないだろう。もっと深刻なのは、明日香
と兄友の関係を知ったとき、僕が一瞬でも彼女を嫌悪する感覚を覚えたことにあった。明
日香のかつての中学生としては非常識な付き合いや奔走な行動に関しては、それが僕への
反発から発した行動だと思っていたから、僕は一面では明日香に対して優越的な位置を壊
すことなくそれを許容することができた。でも、明日香と兄友の関係、詳細は承知してい
ないけど明日香の兄友へのアプローチは家庭事情や僕への反発とは因果関係がなさそうだ
った。
それは一つ目の理由と相関関係となっていることだけど、それなら明日香の行動は単純
に好きな男を誘惑しただけのことになる。しかも池山という彼氏がいるにも関わらずに。
そのときの明日香の行動は僕に対する愛情とは全く関係ないことだから、僕が優越的な立
場に立って明日香の中学生らしからぬ行動や生活態度を許容して受け入れようとした土台
自体が崩れてしまうのだ。
きっと奈緒ならこんな心配をすることはないだろう。奈緒は、引き離されてから今に至
るまで、それが実の兄に対するものにせよ恋人に対するものにせよ、僕のことしか頭にな
い。もちろん、これまで付き合った男なんかいない。奈緒の頭の中には、かつて常に一緒
に過ごしていた僕しかいない。
明日香に誓ったばかりの僕は、彼女を抱きしめながらこんなどうしようもないことを考
えている。これでは最低なのは明日香ではなく僕の方だ。僕は無理にその考えを意識の外
に追いやろうとした。
奈緒が実の妹ではないことなんか、これ以上考えても仕方がない。
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