過去ログ - 京太郎「もつものと、もたざるもの」
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909: ◆CwzTH05pAY[saga]
2013/04/02(火) 02:08:35.72 ID:Cw7gu7UDo
再び沈黙が流れる。
店内には二人のバーテンダーがグラスを磨いたりフルーツをカットする音のみが響いていた。
咲は何も言わず桃子の言葉を待った。
どれほどの時間が過ぎたか、ようやく桃子が口を開いた。
「そう考えると、私の憧れていた加治木先輩はもう居なくなっちゃって、私の中の憧れとかそういう気持ちまで取られた気がして……」
最後は絞り出すような声だった。
桃子は残った酒を一気に呷り、おかわりをバーテンに告げた。
「別に加治木先輩が悪いとか須賀君が悪いとかいうつもりはないんすけど、ね。きっと結婚したって加治木先輩は加治木先輩のままってのもわかってるんすがね」
八つ当たり、とぽつりとつぶやいて苦笑した。
咲はその言葉に小さく頷いた。
「わかるよ。わかる。理屈じゃないもんね」
「……吐き出せて少し楽になったっす。ありがとう」
咲は小さく首を振りわずかに残ったジンフィズを飲み欲した。
「すみません、ゴッドファーザーください」
「……大丈夫っすか?」
アルコール度数が高いカクテルを注文する咲に桃子は驚きの声を漏らした。
咲は赤くなった顔でにこりと笑って大きく頷いた。
「大丈夫。私も今日はちょっと飲みたい気分だし」
「そうっすか」
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