22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:22:43.89 ID:y8XKonFyo
我那覇響の『縄張り』は765に所属することで、劇的に広がった。
それまでは美希の忠告に従って、東京での活動範囲を一定の地域に限っていたのだ。
だが、765の一員となれば、東京全域で本来の姿を現して差し支えないのだという。
もちろん、それなりの準備と後始末が必要となるので、実際にはそうそう安易に行うことはできないのだが。
響自身の感覚から言っても、真の姿をさらすべきタイミングは慎重に選びたいところであった。
故に、彼女は人の目が届かない遥かな高み――ビル群の屋上を跳び伝いながら、夜の街を走っていた。
本性をさらけ出し、人の身ではけっして出せない速度で風と共に走る。
空を見上げる者がいたとして、あるいは高層ビルの窓から外を眺める者がいたとして、彼女の姿は空を駆ける流星のようにしか見えなかったろう。
そんな銀光が、とあるビルの上で止まった。
一瞬、なにか巨大な獣の姿が闇の中に浮かび上がるが、幻のようにすぐに消え失せ、その後には小柄な少女だけが残される。
素っ裸の状態で。
「よいしょっと」
背負っていた袋から衣服を取り出し、裸身にまとい始める響。
それから、彼女は屋上の端まで行って、眼下を見下ろした。
そこには、もう営業の終わった駅と、駅前広場がある。
「ここも封か」
封と言い、人払いと言い、結界と言う。
呼び方は人それぞれだが、要は人が寄りつかないように響たちのような人ならざる者が施す術だ。
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