23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 22:23:37.01 ID:y8XKonFyo
効力はそれを作り出す術者次第で様々。
なんとなく近づきたくなくなるという程度のものから、認識をゆがめ、場所そのものを人の意識から奪い去ってしまう強力なものまで。
いま、響が感じているのは、その中間くらいだろうか。
健康な者が頑としてでも駅にたどり着くと決め、体調の不調を感じながらも歩みを進めたなら、もしかしたら、そこにたどり着けるかも知れない。
だが、この深夜に誰がそんなことをするだろうか。
むしろ、この時間帯に施すには厳重すぎるくらいの術であった。
「誰だろうな……っと」
響は一息に屋上の端を飛び越えた。
もちろん、そこで生じるのは急激な落下である。
重力に導かれて、彼女はぐんぐんと落下し、そして、地面に激突するかと思われたその時、くるりと体を一回転させて、軽やかに着地した。
三十階のビル分の高さがもたらした落下速度をどう殺したのか、音すら立てず、彼女はそこに立つ。
「あれ、雪歩か」
「え、響ちゃん?」
広場を囲むような形でぽつぽつと立つ街灯の明かりの下、なにやらうごめいている一群の中に知った顔を見出し、響は声をかけた。
雪歩のほうも振り向いて響を見る。
ただし、彼女はなぜかその両目をつぶっている。もしかしたら、闇の中では光ではなく、音をあてにするタイプなのかもしれない。
「なにしてるんだ?」
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