15:>>1[saga]
2013/03/10(日) 13:03:15.67 ID:DZ1OCmmz0
◇◇◇
「まあそんな機体に、俺は明日から乗れるわけだよ。いや、テストでは乗ったんだけどさ、今回は実戦装備なんだ!
――明日、任務から帰ってきたらもっと乗り心地とか詳しいこと話してあげられるからね!」
そういう青年は、いまや二人の屈強な男たちに両腕を抱えられ、ずるずると店の外へ引きずり出されるところだった。
それでもまだにこやかな表情で、女性に向けて話かけている――青年を引きずる両脇の二人はうんざりとした顔で声を上げた。
「てめえ、4番のくせに抜け駆けとはいい度胸だ。午後から明日の飛行ルート詰めるって言ってあったろうが!」
「申し訳ありません、ヴィクトリア嬢。この馬鹿がご迷惑を――」
気にしないで、という風にヴィクトリアと呼ばれた女性が手を振る。だが引きずられる青年は、意にも介さず叫んだ。
「迷惑じゃないよね!? 迷惑じゃないよね!? 戦闘機って恰好いいもんね!? ねえ、隊長!」
隊長と呼ばれたのは、出口の脇に立っていた壮年の男だった。精悍な顔つきに、短く切った髪を後ろに撫でつけるようにセットしている。
統合軍には珍しいベテランパイロットである。その彫りの深い顔に苦笑を浮かべ、ぺこりとヴィクトリアに一礼する。
「部下の自慢話に付き合ってくれて感謝する。次に店に来た時には、一杯奢らせていただきたい」
「隊長! そうやって僕をダシにして!」
「馬鹿、あれがスマートな誘い方ってもんだ! お前も勉強しろ!」
そんな喧噪と共に、4人の戦闘機乗りが店を出ていく。
静かになった店内で、ヴィクトリアはマスターに向かって疲れた声音で呟いた。
「戦闘機乗りって、やかましいのね」
「まあ、戦闘機自体うるさいからなぁ。乗ってる奴らもそうなるんだろう」
――その騒がしさが二度と聞けないことを、この時点では知る由もない。
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