過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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831:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/08(月) 07:25:46.87 ID:xpoXGkz10
誰かに襲われ、逃げ切れなかったのではないだろうか。
そして、班のメンバーの首輪が連動しているルールの下、リーダーである優人の死亡により命を落とした葉瑠。
どのような状況だったのかはわからないが、葉瑠は下剋上ルールに則り優人を殺めて生きるより、優人と共に生を終えることを選んだのではないだろうか。
優人は葉瑠を慕い、早稀の見立てでは葉瑠も満更ではなかっただろうから。
プログラム対象クラスなんかに選ばれなければ、大切な人と共に命を散らすだなんて悲しい最期を迎えることなんてなかったはずなのに――優人と葉瑠に限った話ではないけれど、そう思うと、ツンと鼻の奥が痛んだ。

『続いて禁止エリアいくでー!
 1時からJ=04、島の南の端の方やなー。
 3時からG=02、南西の集落がちょっと入ってるからみんな気ぃつけやー。
 5時からF=10、おっとこれは海やな、ラッキーラッキー!』

早稀は手の震えを抑えながら、地図に時間を書き込んだ。
この震えは恐怖からなのか、悲しみからなのか、怒りからなのか、わからない。

『じゃ、今回のアドバイスは、アッキー!』

『やっぱ僕なの?
 …まあ、頑張ってんじゃないの?
 でもまだ甘いこと考えてる人もいるみたいだけど。
 …甘いこと考えてたら、死ぬよ。
 じゃ、次の放送も聞けるように、ガンバレ』

アキヒロ(軍人)の淡々とした言葉の後、放送はぷつっと切れた。

甘いことを考えていたら死ぬ――アキヒロの言葉は、誰のことを指しているのか。
命を落とした優人や葉瑠のことなのか、それとも早稀たちのようにプログラムに乗っていない者たち全てのことなのか。
まあ、関係ないけれど。
誰が何と言おうが、プログラムになんて乗らない。
やりたくないことは、やらないと決めているのだから。

不意に大きな音が聞こえ、早稀はびくっと肩を震わせ、隣を見た。
迅が拳で壁を殴っていたのだ。

「迅、駄目、手痛めちゃうからっ!!」

早稀は迅の腕を掴んだ。
迅の大きな拳の間に指を滑り込ませて無理やり開かせると、掌には爪跡がくっきりと残り、小指の爪が食い込んだ部分は、少し皮が捲れていた。

「迅…うわっ」

掴んでいた腕がぐいっと引かれたためバランスを崩した早稀の身体を、迅がきつく抱き締めた。
普段このような行為には積極的ではない迅が突然に抱き締めてきたので驚いたが、身体を伝ってくる震えに、泣きたくなった。

「…ごめん、早稀……ちょっとだけ……」

「いいよー、好きなだけ、好きにして」

思えば、このクラスも随分と減ってしまった。
既に17人ものクラスメイトがこの世を去った。
特に迅がいつも行動を共にしていた男子主流派グループは、クラス内では城ヶ崎麗(男子十番)率いる城ヶ崎グループと並び最も大所帯の8人グループだったが、最早生き残っているのは迅と望月卓也(男子十七番)の2人のみとなってしまった。
唯一「また会おう」と約束を交わした優人はもうおらず、卓也とは一度会ったが敵対してしまったので、もう一度会えたとしてももう以前のように仲良くはできないだろう。
元々兄貴肌で人を頼ることが少ない迅にとって、今、早稀だけが縋ることのできる存在なのかもしれない――これは早稀の想像だけれど、もしもそうだとしたら、少し悲しいけれど、とても嬉しい。


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