859:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/10(水) 01:50:03.57 ID:wSnSqwBi0
津田彰臣(男子13番)は今にも泣き出しそうな表情で、建物の屋上から下を見ていた。
下には、幼馴染だった伊達功一(男子12番)が倒れている。恐らく、もう息はないだろう。首が変な方向に曲がっており、頭の下には血が広がっている。自分が直接手を下したわけではない。功一が勝手に落ちた。自分は助けようとして手を伸ばしたが、届かなかった。――と割り切ってしまう事ができれば苦労はしない。オレがコウに怪我をさせなければ、コウは死ななかった…オレのせいだ…
彰臣は頭を抱えた。気が合わないとはいえ、掛け替えのない幼馴染を殺してしまった。その罪悪感は、彰臣の背中にずっしりと圧し掛かっていた。
「コウ!!?」
下で悲鳴とも取れる叫び声が聞こえた。
彰臣は弾かれた様に顔を上げ、屋上から僅かに身を乗り出した。この声は…
「コウ、何でこんな…っ」
功一の傍に駆け寄っていた人物が、建物を見上げた。
彰臣と目が合った。
彰臣は慌てて顔を引っ込めた。
どうする… 見られた…
もう、駄目だ…っ
彰臣はその場に蹲った。
全身がガタガタと震える。
下にいたのは、この状況を誰よりも見てほしくなかった、もう1人の幼馴染で彰臣の想い人――高山淳(女子11番)だった。
淳はこの状況をどう見たかはわからない。
ただ、十中八九、彰臣が功一に突き落とされたとでも思うだろうが。
階段を駆け上がる音が聞こえる。
徐々に大きくなっている。
間違いなく、淳だ。
どうなる…責められるよな、やっぱり…
決定的に嫌われただろうな…どうする…?
彰臣は、自分のアーミーナイフをじっと見つめた。ナイフ部分は赤く汚れている。
…仕方が、ないよな…当然の報いだよな…オレは、人を殺してしまったんだから…
ナイフを、そっと自分の手首に当てた。
震えを何とか堪え、静かに目を閉じた。
ごめん、淳… オレ、ちゃんと責任取るから…コウが死んだのは、オレのせいだから…頼む、嫌いにならないでくれ…自分勝手な願いだけど…頼むよ…
ナイフが僅かに皮膚に食い込み、そこから赤い液体がじんわりと滲んだ。
同時に、パンッと屋上のドアが開いた。
「アキ、何やってんだい!!」
淳が怒声を上げ、彰臣に突っ込んできた。
彰臣の手からナイフをもぎ取り、遠くに放り投げた。
そして、彰臣の肩を掴んで激しく揺らした。
「アンタ今何しようとしたか、わかってんのか!?」
「じゃあ…どうしろってんだ…」
消えてしまいそうな彰臣の声に、淳は眉間にしわを寄せた。彰臣は両手で自分の頭を抱えた。
「コウが…死んだのは…オレのせいだ…オレが…殺したようなものなんだ…っ」
淳がはっと息を呑んだ。
「それって…どういう…」
彰臣はしばらく黙っていたが、やがて訥々と語り始めた。自分と功一の間に起こった衝突の事、功一が襲ってきた事、功一の目を切りつけてしまった事、そして――
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