911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:54:10.31 ID:868/ISGe0
身体に痛みを憶え、湯浅季莉(女子二十番)はゆっくりと瞼を持ち上げた。
顔の下敷きになっていた右手がじんじんと痺れているし、首が痛む。
まるで授業中によく眠った後のよう――そこまで考え、季莉は眉を顰めた。
おかしい。
季莉は上半身を持ち上げたのだが周りは暗くてよく見えないので、自分が体を預けていた板を触り、そこから手を滑らせてその全体像を把握した。
これは、学校で使うような机だ。
しかし、帝東学院のものとは少し形が違う。
同様に自分が腰掛けている椅子にも触れてみたが、やはり形状が違うようだ。
ここは、どこ?
学校じゃない。
そもそも、あたしたちは修学旅行に行く途中だったはず――あれが夢じゃなければ。
季莉は前に手を伸ばしてみた。
すぐに、温かい何かに触れることができた。
これは、人の体温による温かさ――丸みを帯びたフォルムは、恐らく背中だ。
少し手を上にずらしてみると、別の布の感触がした。
それを掴み、形を確認してみる――フードだろうか、これは。
「…早稀?」
季莉は友人の水田早稀(女子十七番)の名前を呼んでみた。
フードがついている服を着ている人間で最初に思い浮かんだのが全体はカーキ色でそこに白黒のストライプ模様のフードが付いたパーカーをいつも着ている早稀だったこともあるが、早稀が前にいるのなら、それは教室での席順と同じ可能性が高いからだ。
前にいる人物は何も答えないので、今度は後ろや左側に手を伸ばしてみたが空を掴んだだけに終わった。
季莉の席は最後列で窓側から2列目、ただし窓際の列は机が1つ少ないので季莉の左隣には誰も座っていなかった――つまり、やはりこれは教室での席順と同じ並び方なのではないだろうか。
そうであれば、右隣にはクラス1大きな体を持つ無愛想な林崎洋海(男子二十番)がいるのだろうし、右斜め前には副委員長の奈良橋智子(女子十一番)が、左斜め前には銀髪赤メッシュという、パーマをかけた明るい金髪をツインテールにしている季莉と同レベルで派手な頭をしているサボリ魔の芥川雅哉(男子二番)がいるはずだ。
とにかく、こう暗くては確認することも困難なのだけれど。
「ねえ、早稀…早稀ってば」
洋海とは会話をしたことはないし、智子はたまにからかったり嫌がらせをしてやったりしたこともある仲だし、雅哉は女子相手にヘラヘラしているところがあまり好きではないので、声を掛けるならやはり前にいるであろう早稀しかいなかった。
お互い一時は問題児扱いされていた者同士ということもあって仲良くなったのだけれど、お互い落ち着いた今では様々なことに対して同じテンションではしゃぐことができる1番の親友だ。
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