過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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924:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 11:14:24.44 ID:868/ISGe0
人工の薄明かりでぼんやりと見えたのは、我らが母校、春日宮中学の生徒会長、常陸音哉(男子14番)。学年トップの頭脳と、パソコン部部長らしからぬ運動能力の持ち主で、クラスメイトや教師からの信頼が厚い。不良連中とも良好な関係を築いているので、誰とでも分け隔てなく接することができるのだろう。簡単に言うと、反吐が出るような野郎ということだ。
「…そこにいるの、会長だよな?」
滝井良悟(男子10番)は、恐る恐るという風を装って、訊いた。正体なんてとっくにわかっているけど、敢えて訊いた。音哉の横で、音哉の恋人だという高井愛美(女子13番)が動いた。小さく声が聞こえ、副委員長である伊賀紗和子(女子3番)も一緒にいるということがわかった。知力は2人共音哉には及ばないまでも優秀で、運動能力についても、愛美は陸上部中距離部門のエースで、他の競技でも苦手なものは無いほどだ。さすが生徒会長様、侍らす女も只者じゃない。
「そうだよ…良悟」
音哉が笑みを浮かべ、答えた。誰からも好まれる穏やかな笑顔だ。良悟も笑みを返した。大丈夫だ、負けない。頭の良さは月とスッポンなのだから、下手な小細工をしても仕方がない。運動能力なら、この中では1番だ。全国区プレイヤーをなめてもらっては困る。パソコン部部長と、女2人になんて、負けない。生き残ると決めた。人のためになんて死にたくないのだから、[ピーーー]のは仕方がない。北王子馨(男子5番)の分も生きるんだ。そう、決めたんだ。…運が悪かったな、会長――
「なぁ、会長。悪いけどさ、俺のために、死んでくれない?」
「ちょ――滝井くんッ!?」
愛美が非難の声を上げた。それに対して、音哉の反応は静かだった。
「…本気?」
声も口調も穏やかだった。それなのに、何故か、背中に冷たいものが走った。しかし、それに負けてはいられない。
「マジに決まってんだろうが、冗談だとでも思ったのか?死にたくないから、[ピーーー]んだよ。文句、あんのか?」
「人を[ピーーー]って…そんな簡単に言えることなのかな…?その重さがわかってるのかな、良悟…」
ハッ、これだから優等生は…
良悟は鼻で笑った。ずっと右手に握り締めていた大型の自動拳銃(コルト・ガバメント)の銃口をゆっくりと上げ、照準を音哉に定めた。
「うるせぇよ、優等生が…説得でもする気かよ?俺は、翔平も淑仁も…馨だって殺ったんだよ。そんな俺がよ、お前を[ピーーー]のに、躊躇うと思ってんのか?」
愛美と紗和子が息を呑んだ。机に隠れて頭だけを出した紗和子が、震える声で、呟いた。
「そ、それって…3人とも…仲良かったんじゃ……」
「そうよ、それに馨くんはあなたのパートナーじゃないの!?」
愛美が叫んだ。その言葉が、胸に刺さった、少しだけだけど。罪悪感は、もう置いてきたんだ、ここにはない。
「これがプログラムなんだ、関係ないだろ?…とにかく、テメェらなんか、ブッ殺せるっつーこった」
更に何かを言おうとした愛美を制し、音哉が1歩前へ出た。
「ルール上、君に関係あるのは俺の死だけだ、愛美ちゃんたちは無関係だよ。2人には手を出さないでもらいたいな」
「…テメェが死ぬならそれでも構わないぜ」
音哉は前髪を掻きあげ、黒縁の眼鏡を指で押し上げた。手の間から見える瞳が、妙に涼しげだった。
「……俺に、勝てるとでも?」
穏やかな口調なのに、威圧感があった。
何かが、何かが違う。いや、気のせいに決まっている。ハッタリだ、頭の良いヤツが考えそうなことじゃないか。
「オタクパソ部の部長なんか、瞬殺だっつーの!!」
良悟は気付いていなかった。これは優越感に浸って出た言葉ではなく、精一杯の虚勢だということを。頭では優勢だと思っているのに、本能がそれを否定しているということを。鳥肌が立った。音哉が、笑い声を上げた。それは低くて小さくて、それなのに酷く響いた。気のせいじゃ、ない…?笑いを収めてもう一度前髪を掻きあげた後、音哉は笑みを浮かべた。先ほどまでとは明らかに違う、“不敵”という言葉が似合う笑顔だった。
「様子見てたけど、お前はマジでやる気っつーことだな?よくわかったよ、良悟。話し合いっつー平和的解決法は通用しないってことがな」
口調まで違う。どういうことだ、これは。
「お、お前…何なんだ……!?」
声が震えた。無意識のうちに、疑問が口を出た。ようやく頭で理解した――銃口を向けているのはこちらなのに優勢ではないし、主導権も握っていないということを。引き金を引いてしまえばいいのに、引けなかった湧き上がってくる疑問と恐怖が、指を硬直させていた。音哉は鼻で笑った。

「ハッ、何言ってんの、お前。お前が言ってただろ、生徒会長でパソ部部長の常陸音哉だよ」

その手から、何かが落ちた。煙草だ。何で、誰からも信頼される優等生の生徒会長の手に、煙草がある?音哉は指の関節を鳴らした。

「大和たちに比べれば劣るかもしれないけど、場数は踏んでんだよ…ま、大分鈍ってんだけどね。とにかく、お前に俺は倒せない、残念だけど――」

音哉の視線が、良悟から離れた。

「…良悟、後ろ……」

良悟は目を丸くし、次の瞬間には笑った。

何だ、やっぱりハッタリか。
後ろに注意を向けておいて、その隙に――ありきたりな戦法だ。
やられまいとして、役作りまでしたっつーわけか。

「バーカ、いくら俺がバカでも、そんなハッタリに騙されるかよっ!!」

「馬鹿、後ろ……弘也だッ!!」

え、弘也……山神…ッ!?

説明中に、男子相手には容赦しないと宣言していた山神弘也(男子17番)。
後ろにいるなら、確実に、殺られる。

良悟は、音哉の声に反射的に振り返った。
目の前には、汚れたカーディガンとカッターシャツ。
そして、鎌。

ヤバい……ッ!!

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


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