過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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971:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 16:03:20.89 ID:D/J1TKXp0
喬子を見たが、表立って変化はなかった。
大和の気持ちを汲んで、見せなかったのだろうか。

おそらくそうだろう、喬子は――俺の彼女は、そういう子だ。

「わかり、やすかった?」

「そりゃあもう、俺の成績の伸びっぷり見たろ?
 先生になれるぜ、絶対!」

あぁ、また傷を与えてしまったかもしれない。
一瞬、C組の担任だった岡本隆志の顔が浮かんで、消えた。
自分たちを見捨てた男。
クソッ、気に入らないヤツだ。

だけど、この言葉にはお世辞も何も入っていない。
大和の成績が急成長したのも事実だし――学校の教師たちの大和を見る目が変わったのが、はっきりとわかった――、喬子の将来の夢である教師になれると思ったのも事実だ。
そう、喬子には夢があった。
大和の家で勉強会を始めて少しした頃、照れくさそうに言っていた。
「学校の先生になるのが夢なの」、と。

喬子の夢を応援している。
だから、護り抜いてみせる。
誰にも殺させやしない。
大和はベレッタM84Fを握り締めた。

ふと、喬子の視線が、大和の手元に行っていることに気付いた。

「どうした?」

「…ううん、ただ……」

喬子は視線をそらした。
畳の網目をじっと見ていた。

「北王子くんと…滝井くんのこと、考えてたの…」

その言葉に真夜中の出来事が蘇る。
北王子馨(男子5番)が滝井良悟(男子10番)に襲われていた光景だ。
これがプログラムだとはいえ、親交がなくても親友だと(いや、あんなことがあったのだから、親友だった、と言ったほうが正しいのかもしれない、クソ)わかるくらいの2人だったのに、戦っていた。
潤井正純(男子2番)あたりに言った、「親しかろうが何だろうが、疑った方が身の為だ」という言葉の真実性を見てしまった瞬間だった。
2人共放送で名前を呼ばれていないので、馨が逃げ切ったのだろう。

「あの2人…親友同士…なのに…あんなことになって…それで…」

喬子が顔を上げた。その瞳は不安に揺れていた。

「大和くんは、どうする…?もし、もしも…」
「もしもっつーか、弘也は確実だな」

喬子は言葉を濁したが、何を言いたいのかは理解できた。要は、もしも仲間が襲ってきたらどうするのか、ということだろう。

「言ったろ、俺は自分と喬子を護るためにしかコレは使わないって。襲ってきたら、正当防衛は仕方ない。逃げるなんて、俺の性には合わねぇし。ただ…」

頭の中に仲間たちの顔が浮かんでは消える。どいつもこいつも笑えるほどに曲者揃いだ。まったく、どうしてこんなに濃いメンバーが集まってしまったのやら。

「できれば、戦いたく…ないよな」

喬子は頷いた。大和にとっての仲間は喬子にとっても仲間なのだから、当然だろう。

「あたし…あたしね、ずっと、考えてた。もしも友達に…襲われたりしたら…って」

そうだ、喬子には大和の仲間以外にも親しい友人がいる。通っている(これも過去形になるのか、くそったれめ)塾の友達だ。喬子は笑みを浮かべた。笑っているけど、今にも泣き出しそうだ。

「あたしには…頑張って生きるだけの…価値があるのかな…って。だって、あたしはもう――」
「喬子っ!!」

言葉を遮って、叫んだ。
これより先を言わせたくなかった。
今、喬子は自分の心の奥に封じていた闇を引き出そうとしていたのだから。


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