987:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 16:33:08.11 ID:D/J1TKXp0
「仕方ないな。
…ビール飲み放題も付けること」
「よぉっしゃぁっ!!」
原田が喜びの声を上げた。
酒が入ったのでより一層やる気が出たのだろう。
「決まりだ、よし、アンタから言ってくれ、遠藤さん」
天方に促され、遠藤は資料を捲った。
男女1人ずつということで、単純にそれぞれの能力だけ見るわけにはいかない。
優勝候補者と一緒にいるパートナーも生き残る可能性はある。
「…常陸音哉と高井愛美…かな」
「あぁ、高井さん…彼女良い性格してますよね」
岸田がくつくつと笑った。
確かに、生徒たちの首に巻きつけてある首輪に付けられた盗聴器による記録によれば、音哉も愛美もそれぞれ言葉の端々に毒があり、聞いていて飽きない(これは岸田が言っていた、真面目に仕事をしろ、仕事を)。
「じゃ、俺は山神弘也と鶴田香苗にしとくか。
やる気マンマンだからな、2人共。
総司、お前は誰に賭ける?」
「あ、天方さんったらずるい!!
じゃあ私は…須藤大和君と玖珂喬子さんに。
あの2人の記録聞いてると、恥ずかしくて恥ずかしくて…」
「お前ねぇ…」
遠藤は溜息を吐いた。
盗聴器が付けられているのは、会話を聞いて楽しむためではない。
1番の理由は、万が一不穏な動きをする者がいた場合、それを口に出してもらえばすぐに本部に作戦が筒抜けになるからだ。
作戦を聞いてしまえば、いくらでも対処の仕方がある。岸田は単に楽しむことにしか使っていないようだが。もちろん、盗聴器の存在は生徒たちには伝えられていない。中には可能性として盗聴器の存在を考える生徒もいるようだが。
「原田さんは?」
岸田に聞かれ、原田は無精髭の生えた顎をさすった。しかし、名前が出てこないのか、遠藤に生徒資料を借りた。しばらくそれを捲っていたが、その手が止まった。
「俺ね、このコ、高谷貴瑛ちゃん。野郎は…今誰かと一緒にいんの?」
「確か、西谷克樹君と一緒ですよ」
「何、マジで!?よっしゃ、有力株じゃねぇの、じゃあ貴瑛ちゃんと西谷克樹!!」
原田の意見に、天方が眉間にしわを寄せた。
「高谷って…何で?他にも大谷とか野原とか村主とか…有力なのいるだろ?」
原田は片目を瞑り、舌打ちをしながら人差し指を横に振った。ごつい男のウインクは、見ていても気味悪さしか感じない。
「だーって死んでほしくないし。教室出る時、あの子に道教えてあげたんよ。そしたらお辞儀してくれちゃって、なんか嬉しかったからさ!」
天方が鼻で笑った。こういうことにあまり関心を持たないのは、昔から変わらない。また、人情派の原田も、高校時代に出会ってから変わらない。軍人になっても代わらない友人たちに、遠藤は苦笑した。
「で、ぱっつぁんはどうなのよ?」
原田は横にいた永倉に訊いた。
「…そうだな。滝井良悟…彼の目は良かった、戦う者の目だ。女子は…卜部かりんだな、彼女の目も戦う者の目だ」
「何だそりゃ」
原田が笑った。それにむっとした永倉が、“戦う者の目”がいかなるものかということを力説し始めた。最初は聞いていた遠藤だが、その行き過ぎる熱意に呆れ、仕事に戻った。天方と岸田も、それぞれの持ち場に戻る。確かに、このクラスには有力候補が大勢いる。永倉の言う“戦う者の目”を持つ者も多い。彼らの戦いはどのようなものになるのか。…ククッ、楽しみだな……遠藤は生徒たちの首輪の発信機により現在位置を表示している画面を見た。その中に、接近しつつある2つの反応を見つける。そこに表示された出席番号と、手元にある資料を照らし合わせた。
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