988:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 16:33:52.11 ID:D/J1TKXp0
 友情なんて脆いモノ。 
 ほんのささいなきっかけから、ひびがいく。 
 ひび割れたモノは、直らない。 
 それはガラスのごとく。 
 女の仲間割れは醜いモノ。 
 昨日の友は今日の敵。 
 あっという間に裏切るのだ。 
 その仕打ちは、いやらしくて、きたなくて、陰湿で。 
 相手の痛みなんて、考えもしない。 
  
 だから、わたしは誰も信じない。 
 裏切られた痛みを、辛さを、悔しさを、知っているから。 
  
 そして、わたしは赦さない。 
 あの日の出来事に、第三者なんていないのだから―― 
  
   
  
   
  
 遠藤勇(担当教官)が目を止めたエリアは、地図上のF=10エリアにあたる。 
 このエリアは、細長い建物である1号棟及びその周りが含まれている。 
  
 遠藤の注目株の片方――村主環(女子12番)は1号棟の1階ロビーにいた。 
 不良グループに属する環は、“優勝候補の一角”である。 
 もちろん、そんなことは本人の知るところではないが。 
  
 環は派手な少女だ。 
 眩しいほどの金髪は肩に当たる程度に伸ばし、広めのブラウスの胸元からはシルバーに輝くシンプルなチェーン型ネックレスが覗いている。 
 短めに切り詰めたスカートから覗く足は白く、その見た目は大東亜の人間ではないようにも見えるが、北王子馨(男子5番)とは違い、環は純大東亜人の血を引いている。 
  
 そして、細く整えられた眉に、吊り上がった瞳、すっと通った鼻筋と真一文字に結ばれた薄い唇は、ほとんど動かされることがない。 
 発する機会は少ないが、その声は凛としている。 
 全体的に大人びた空気をかもし出す環は、15歳には見えない。 
  
 そんな環の横には、金属バットが置かれている。 
 大人びた少女と安っぽいスポーツ用品は、まるで合わない。 
 しかし、これが環に支給された武器だった。 
 握りすぎで手に豆ができるのを嫌い、今は置いているだけだが、いざという時にはそれで応戦しなければならない。 
 その用途は、当然相手を殴打するということになるのだろうが、そのことに関しては環はほとんど抵抗を感じていない。 
  
 理由は簡単。 
 この状況下、誰一人として信じていないからだ。 
  
 普段からあまり人と親交を深めていない。 
 それは同じグループである玖珂喬子(女子9番)や野原惇子(女子16番)ですら例外ではない。 
 相手がどんなに近づいてこようとも、環は一線引いてきた。 
  
 プログラムにおいては、尚更だ。 
 命の奪い合いの状況で人を信じるというのは、愚かだ。 
 特に女子は、全員が敵だ。 
 誰一人信じてはいけない。 
 信じたら負けだ。 
 信じたら、裏切られ、寝首を掻かれるのがオチだ。 
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