過去ログ - 伊織「さようなら」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:39:44.28 ID:fz9LGbgw0

親っていうのは、子供が出来たら嬉しいものなのよ。
中にはいい顔をしない人も居る…けれど、私の所は違った。
私が生まれて、ある程度物心がついた時点から…私は光で眩しい社交会へと足を踏み入れていたらしい。

その時の記憶はあまりないの。だって、本当に昔の事なのだから。
だから、私は向こうを知らなくても、相手は私のことを知っていたりする。
ほんの数秒、数分の会話しかしていない相手にも、言われるの。
『昔、会ったことがあるんだよ。小さい頃だったから、覚えていないかな』なんて。

いくら小さい子供でも、あくまで水瀬財閥の娘。
そんな言い方をされたら、当然こう答えるしかない。
『はい、もちろん、覚えています。私によくして下さいましたから、あのときは』
幾度と無く繰り返したその言葉。今でも不意に問われたらそう答えそうになる。

そう答えると、相手は今までにない笑顔を浮かべるの。心の底から笑ってる。
けど、決して本意は見せない。どこまでも、どこまでも深く黒い瞳の中で。
私は利用されていると知っていたわ。他人の出世の材料として、生贄のようなものとして。

…どうして、正直に答えないか、って?知らないものは知らない、そう答えないのか…って?
私だって、知らないものは知らない、そう通したい。
けれど尊敬するパパやママ、お兄さまたちの顔に、名誉に、家柄に泥を塗るわけにはいかないでしょう?

どうしていたら、よかったのかな。どうしていたら…そう考えるときもある。
そうして言うところの、猫をかぶることを覚えた。

ありとあらゆる世界的な実業家たちが集まる社交会。
世界のぜいたくを全て1箇所に凝縮したと言っても過言ではない、社交会。

ただ…私もそれを繰り返すうちに、おかしくなりそうだった。




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