過去ログ - 1~2レスで終わるSSを淡々と書く
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21:2/2[sage saga]
2013/03/15(金) 18:41:31.08 ID:JLyRmb8y0

僕のアパートから捨て少女?のところまで、走って5分ほどの距離であった。
少女のいた場所に戻る頃、僕は彼女以上にみすぼらしい姿になっていた。
原因としては、家を出る際に間違えて便所に行くためのサンダルを履いてしまったこと、
そのせいで水たまりに2回転んだこと、
走っている途中から雨が降り出したこと、
その他体力的理由である。

「……」

捨て少女は隣に置いてあった段ボールをうまく使い、傘の代わりにしている。
途中から走れなくなった僕は、ずっと雨の中歩いていたため息は整っていた。
これで息が上がっていたら、興奮しながら少女に滲みよる気味の悪い不審者に思われたであろう。


さて、どうしたものか。
生まれてこの方、女性に話しかけたことがない。
正確にはあるのかもしれないが、少なからず記憶には残っていないのでないと言って構わないだろう。
草食系ならぬ断食系男子である。
いや、意味が分からない。

というか、真面目になんて声をかけるのが正解なのだろう。
先ほどのラブ小説的に言えば「うち来る?」という昼番組みたいなノリで行けばいいのだろうか。
そもそも僕の家はゴミと無残に捨てられたティッシュの山で溢れかえっているので無理だ
。それとも、紳士的に「大丈夫ですか?」だろうか。
どちらかというと僕のほうが大丈夫ではない状況なので矛盾が生まれてしまう。
誰か助けてくれないだろうか。

少女がこちらをジロリとみる。やばい、これは不審者を見る目だ。
何とかして一言声をかけなければいけない。

僕は人生の大半をゲームとオナニーに費やしてきたことを恥じた。
もっと頑張って経験を積めばよかったのだ。
そのとき、走馬灯のように頭の中を閃きが駆け抜けた。
紳士的かつ、丁寧な一言。

「きゃ、きゃんないへるぷゅー?」

それ中学生時代、英語の時間に隣の席と会話練習をする際、用いられる一言である。
僕は緊張のあまり震える声でこの英文を叫び、唾を大量に顔にかけ、練習相手だった隣の席の女の子を泣かせてしまった。
以後、なぜか隣の席の人は後ろの席の人と練習をし、僕は先生と練習をした。

なにはともあれ、僕はなにを言っているのだろうか。
お手伝いしましょうかって何だよ、しかも英語って。
こういう時ツッコミをしてくれる友達が欲しいと何度思ったか。
僕はこのようなつまらなく、くだらないボケをひとりで考えては披露しているのである。
なんと不毛な愚行であろうか。いや、意外と楽しいから困る。

少女がきょとんとした顔でこちらを見てくる。
段ボールを頭の上に載せて、ちょこんと座り、こちらを上目で見ている。
不覚にも萌えてしまう!!

僕は、今までの人生を悔いた。
というかさっきの一言を悔いた。
大人しく家に閉じこもってオナニーでもしていればよかったのだ。
普段と違うことをするということは、それなりの傷を受ける覚悟をしなければいけないということだったのだ。

僕は、恥ずかしさと罪悪感から逃げるため帰り道へと向きを変えた。
雨で濡れて汗と涙が目立たなかったのが不幸中の幸いである。
さらば少女。こんな情けない屑ではなく、爽やかなサラリーマンに助けを求めてくれ。
僕の小指ほどしかない優しさは雨と一緒に下水道へと流されていった気がしたが、あえて流しておくことにする。

少女があっと声をだし、救いとも呼べる声を発した。

「な、なんで英語やねーん…」

不覚。
背中越しに受けるツッコミに僕は震撼した。
なぜだか僕は溢れる涙をこらえきれなかった。この少女はきっと天使であろう。

僕は振り返り叫ぶ。

「なんで関西弁なんだよ!!」








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