過去ログ - 春香「これからのきみとぼくのうた」
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33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/16(土) 12:04:29.87 ID:bwJZNukvo

「そして、時間が経つにつれて、彼女の周りから子供の姿が減っていくんだ」

「どして?」

「引っ越していくから。最後まで一緒にいたのは俺だけになる」

「……」

「俺が中学に上がるまでほとんど毎日一緒にいたよ。
 お互いの親が遅くまで仕事をしていたから、交代して晩御飯を作ったりしてたんだ」

「奇妙な生活だったんですね」

「そうですね。奇妙な関係だったと思います」

「だから、プロデューサーさんは料理が上手なんですね」


その前の冬に給湯室で料理をしていた。
味見をさせてもらったら、とてもおいしかったのを覚えている。


「彼女と一緒にいるときはもう、勉強しかしてなかった。他にやることもないからな」

「……」

「そんな生活をしていたある日、おかしなことを言い出したんだ」

「……?」

「『楽しかった?』って」

「……」

「『なにが?』って聞いたら、『今までの生活が』って繋げるんだ」


それは別れの前の言葉だった。


「なんて答えたんですか?」

「『わからない』って答えた」

「……そのお姉ちゃんと一緒にいて、楽しくなかったの?」

「よく言うだろ? 失って初めて気付くって」


その言葉が今は痛い。


「お姉さんはなんて返したんですか?」

「『おまえが一人で居たいと思っていたから、アタシは見えない振りをしていたんだ』」

「……」

「『だけど、誰かと一緒にいて寂しいなんてことは無いはず。だから、あたたかさに触れてみろ』」

「…………」

「『それでもひとりで居たいのなら、それはしょうがない』と言って、勉強に戻ったんだ」

「……」

「俺は聞いたよ。『俺と一緒に居てどうなんだ』って」

「そしたら?」

「『退屈だったよ』と言って、丸めた教科書で俺の頭を叩いたんだ」

「……容赦ないですね」

「ちょっとショックだったから、新聞紙を丸めて反撃した」


意地悪そうな表情で、懐かしんでいた。



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