過去ログ - 春香「これからのきみとぼくのうた」
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46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/17(日) 21:12:46.44 ID:H1WPBXuto



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―――



社長と彼が口論になった原因を聞けずにいた私は、彼の横で星を眺めるだけだった。


今ならわかる。


きっと、彼が患っていた病気の事を報告したから。

みんなには黙っていて欲しい、と言ったのだと思う。

結局、私たちはその時が来るまで彼の病気のことは知らなかったのだから。


社長は基本的に私たちの意志を尊重してくれる人。
だけど、彼の考えに納得が出来なかったのかもしれない。
だから、言い聞かせようとして小鳥さんを不審にさせるくらいの口論になった。


今となっては、その辛く悲しい意志を責めることもできない。



「春香」

「はい」



何も知らない私は、彼の呼びかけに何の不信を抱かずに応えるだけ。


「昨日、勉強したとこ覚えてるか?」

「天保の改革、ですよね……?」

「そう、その改革。……庶民の娯楽に制限を加え、当時の歌舞伎役者が処罰を受けているってところな」

「……はい」


学校の勉強を見てもらっていた。

みんなで夏休みの間に勉強をするという、本来なら嫌になるような企画。

それでも楽しく過ごせたのは、彼と事務所のみんなが一緒にいたから。



「寄席に対する規制も厳しくしていたんだよな。
 アイドルである春香で喩えるなら、
 コンサートホールを規制して、その場所が奪われていったということになるのかもしれない」

「……」

「だけど、今の時代でも歌舞伎が残っているのは、それを望む人が多いからだろう。娯楽はどの時代も必要不可欠なんだ」

「……」

「演じる者、それを鑑賞して楽しむ者。伝える側と受け取る側の両方があって生まれるモノ」

「……」

「俺はそれを体験しているんだ」

「……?」


それが彼のプロデューサーを志す原点だった。



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