過去ログ - 智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:3
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737:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/04(日) 22:54:38.98 ID:mIlh3pRxo
 失敗した、と思ったのは街中に出てから。
 いつもより振り返られる回数が多いような気がした。
 それはきっと、女の人も僕の方に注目をするからだろう。
 南総の制服をまとっている時に僕をみるのは、主に同学年代の男子ばかりだった。
 しかし今はどちらかといえば、奇異の視線に晒されている。
 いや、そこまで好奇心のあるものではないのだろうけれど、それでも『今の、女だよな?』とかが聞こえてくるぐらいには危ういらしかった。
 そういえば、家をでるときに隣の人と遭遇しなかったのは今更ながら僥倖といえるだろう。
 下手をすれば変な方向に目覚められて、僕はかの家に拉致られていたかもしれなかったわけだから。

智「失敗したかな」

 なんて思えど今や後の祭り。
 しかし未だに死んでいないということは僕の本当の性別がバレてはいないということだろう。
 そもそも、僕のこの〈呪い〉には曖昧さが多すぎる気がする。
 伊代や茜子、央輝などは非情にわかりやすい。 固有名詞を読んだら、触れられたら、太陽に触れたら。
 太陽に触れる、というのが擬似太陽……つまり日焼けサロンなどのものに触れても大丈夫なのかは曖昧だが、わかりやすい部類だ。

 其れに比べて、僕の『本当の性別がバレてはいけない』というのは曖昧だ。
 例えば、そう。 皆から女性だと認識されている人……仮に僕としておこう、僕が完璧な男装をして、この人は男だと思われた時。
 それは果たして、呪いを踏むのだろうか?
 概念の問題だと思うけれど、僕=女性で認識した場合、目の前の男性=僕とはならないだろう。
 いや男性が僕だと思ったとしても、前提として僕=女性という認識があるなら、あれ、と疑問を浮かべるに違いない。
 それは恐らく、僕の本当の性別がバレたのだと言いがたいだろう。

 そもそも本当の性別を知られるとはどういうことなのか。
 僕……和久津智=男性だと結びつけることがその鍵なのだとすれば、僕の名前を知らない人に僕が男性だと思われても呪いは踏まない、ということになる。
 いや、例えば裸を見られたなら確実にアウト、というのはわかっているけれど。
 つまるところ、『和久津智』が知られているのか、いないのか。 それが焦点なのではないか。
 まぁ、思ったところで試そうとは思わないし、思えない。 それこそ命がけなのだから。

 とんとん、と階段をあがっていく。
 今日は少し早くきすぎたかもしれない。
 もしかしたら、皆まだ揃っていないかも。
 それなら、ちょっと遊んでみるのもいいかもしれない。
 そう思いながら、僕は屋上の扉を開いた。


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