過去ログ - 高垣楓「ホワイトデーのおくりもの」
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4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/18(月) 11:41:44.96 ID:VMr1FUOo0
口の中でゆっくり溶けて、ほろ苦くて、けれど、ほのかな甘みが広がって。
きっと俺の趣味が分からないから、悩んで作ってくれていたのだろう。
丁寧なラッピング、中に入った1枚のメモ。
綺麗に整った楓さんらしい字で、一言。
いつも、ありがとうございます。
ありがとうございます。大切にいただきます。
俺は本当に嬉しくて、最高の笑顔で微笑んで、言った。
きっと、お返しをしますから。
3月14日、ホワイトデーの日には。
約束です。
そう、言っていたのに。
まだ微かに雪が降っていた夜だった。
外は寒くて、まだ少し息が白く流れていって。
なのに、とても顔が赤い楓さんにもらったチョコレート。
ああ、約束を破ってしまった。
ただ、その実感と後悔だけが俺の中で渦巻いて。
吐き出される白い溜息は、その日降っていた雪のように。
もらった、甘くてほろ苦いチョコレートのように。
ただ、ゆっくりと溶けて、空へ消えていった。
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