107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 00:59:09.54 ID:7LnCOhGJ0
「先生が子供のときも、きっとそうだったんじゃないかな」
プロデューサーのその言葉に、美希は一瞬ハッとした。
「カモは一見すると穏やかに浮いているように見えるが、水面下では必死に足を動かしている。
子供ならなおさらそうだろう―――なんてのは良く言う話だけどさ」
プロデューサーは、お菓子をつまんで投げた。
「普通の人にとっては、浮き上がるのさえ結構大変なことなんだよ――アイドルだってそうだ」
「皆、必死にもがいているよ。
いつか水面に顔を出したい、キラキラと光るステージに立ちたいってな」
美希は、いつの間にかプロデューサーの顔から目を離せなくなっていた。
「浮き上がった後だって大変さ。
足を必死に動かしていなきゃ、トップに立てないどころかまた沈んでしまう」
プロデューサーは、お菓子の袋を手持ち無沙汰に弄っている。
「お前が、何もしない事に違和感を覚えているのは、もしかしたら、もう一度もがきたいって内心思っているのかもな」
「ただな――」
プロデューサーは美希の方へ向き直った。
急なことだったので、美希は驚いて思わず背筋が伸びてしまった。
「今、事務所で一番もがいているヤツは、そういう理由で頑張ってる訳じゃないようなんだ」
美希の口から、「えっ」という声が漏れた。
「その子は、皆がキラキラ輝くことを何よりも願っている。
だから、自分がまず有名になって、事務所の皆に光を当てたいんだな」
「お前がそうしたように―――美希」
だらしないと思っていた男の目は、いつしか真剣なものになっていた。
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