過去ログ - 美希・雪歩「レディー!」
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140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:05:04.61 ID:7LnCOhGJ0
 雪歩は、その場から後ずさりしていた。

 自分は、何という勘違いをしていたのだろう。
 自分が頑張れば、事務所も明るさを取り戻せるとばかり考えていた。
 救世主にでもなろうとしたのか?
 大事なオーディションで、合格どころか実力を発揮することすらできなかったくせに。

 今こうして、自分は事務所の大きな歯車を壊した。
 それどころか、戻ってきてほしいと願っていた美希を悲しませている。
 しかも、この期に及んで我が身の可愛さのあまり、彼女には真実を伝えてすらいない。
 何と愚かな――!!

 急須が割れる音が、廊下に響いた。
 雪歩は廊下を走りぬけ、病院を飛び出した。

 病院の敷地を出たところで、誰かと肩がぶつかった。

「えっ、萩原さん?」

 たぶん千早だったのだろう。
 だが、ぶつかった相手には目もくれず、雪歩はひたすら逃げるように歩道を走った。

 途中、いくつも大きな信号があった。
 雪歩はそれでも止まらなかった。
 何も聞こえない。

 いっそ、誰か自分の体をバラバラに砕いてほしいとさえ思った。



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