過去ログ - ハーミット・パープルは知っている
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72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:14:34.02 ID:2FB0APaH0
M県S市杜王町に……一つだけポツンとある寺。
今日僕は仕事の合間を縫い、その寺の側にある寂れた霊園に来ている。
おっと、先ほど僕は『寂れた』と言ったが別に『いかにも』な場所という訳じゃあない。
むしろ掃除とか手入れはよく行き届いていて、
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:15:23.97 ID:2FB0APaH0
「あれ、このマッチ火が点かないぞ。露伴先生、代わりのライターか何か持ってませんか?」
おぼつかない手つきで康一君が線香と花、
そして『これ、ぼくの大好物なんですよね〜っ』と言って道中で買っていた饅頭を墓に供えている。
74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:16:10.09 ID:2FB0APaH0
「それが……このお饅頭、『ニラ饅頭』なんですよね〜〜〜。しょっぱくて美味しいんですけど」
何故そんなモノをお供え物にチョイスしたんだ康一君。
75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:17:12.68 ID:2FB0APaH0
「女の『子』……だったんですよね。鈴美さん」
「ほら、ここの墓誌に『鈴美 十六才』って」
76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:17:49.31 ID:2FB0APaH0
「ここに来て改めて思ったんですけど……やっぱりあんまりです。
ぼく達とそう変わらない若さで殺されてしまったなんて」
「それから十五年ですよ。十五年もの間、ずっと一人と一匹であの小道でぼく達のよーな人が来るのを待っていたんだ」
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:19:25.64 ID:2FB0APaH0
ポツ……ポツポツ……
「うわっ、雨が降ってきたぞ。お饅頭が濡れちゃうな、もったいないから持って帰りましょう」
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:22:37.58 ID:2FB0APaH0
車にキーを差し込んでエンジンを吹かす。
ワイパーと窓ガラス越しに見えた景色の向こうでは霧さえ出始めていた。
「おかしいなあ。天気予報じゃあ、『この一週間はカラカラの天気』だと言ってたのに」
79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:23:52.36 ID:2FB0APaH0
今思うと、何故振り返ったのかは分からない。
ただ一つ言えるのはなんとなくで振り返ったんじゃあないんだ。
振り返えらなくちゃあいけないような気がしたんだよ。
80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:24:20.87 ID:2FB0APaH0
『露伴ちゃん』
81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/01(月) 05:25:09.37 ID:2FB0APaH0
多分、その時の僕は端から見ればどーかしたように見えていただろう。
後から康一君に聞いた話だと、康一君は何度も僕に『露伴先生』と呼びかけたのに無反応だったそうだ。
ただ一点、『杉本鈴美』の墓をじっと見つめて。
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