15: ◆4DizgRlA0E[saga sage]
2013/03/28(木) 15:52:27.34 ID:VMrTXD+x0
トーナメントの開催を明日に控えても、未だにそれは手に入らなかった。
何人かの業界人を当たってみたが、誰もが首を横に振る。
それに加えて、俺に軽蔑するような視線を送ってくる。
仕方が無い。俺がやっていることは…そういう、ことなのだから。
けれど、なりふり構っては居られない。開催は明日だ。
一刻も早く届けてあげなければ。そう思っていたとき、携帯が鳴った。
ディスプレイには、社長、の文字。
どうしたのだろう。気付かれたのだろうか。
『もしもし』
「君か?色々…頑張っているようだが」
「少し、話があるから…事務所に戻ってきてくれないか」
『…はい』
あまり見栄えがいいとは言えない、小さな車を転がして事務所に戻った。
社長が呼んでいましたよ。教えてくれるのは嬉しいが、胃に穴が空かなければいいが。
社長室に入ると、俺に背中を向けて立っていて、入り口のブラインドを降ろすよう指示される。
「…君は、彼女を…勝たせたいのかな」
『はい』
「決意は、変わらないかな」
『変わりません…俺は、勝たせて、夢をみせてあげたい』
「…そうか」
これを。悲しそうに呟くような声で、社長は俺にファイルをくれた。
尋ねようと顔をあげても無言のまま。見てもいいということだろう。
ぱらぱらと整理されたファイルを眺めていく。ああ、これが、そうなのか。
ありがとうございます、社長。それだけを伝えて、部屋を出た。
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