過去ログ - 大学教授「私がアイドルのプロデューサーだと」
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60: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:38:08.18 ID:Py/NZ84y0
「まあ、私などは端くれ者だけれどね」

実際、昔から理科型の大学であったから文科型、しかも近代外交史が専門の私は講義の数も多くなく、専ら研究に時間を費やしていた。
大学の教授は往往にして殻に閉じこもるタイプが多いから、親しい同僚というのも多くはない。しかし、大学という場はあらゆる知が結集していることは間違いない。自分の専門分野について何時間でも話せるのが大学教授だ。30年もいると、専門外の言語学や経済学にまで詳しくなってしまった。


61: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:39:06.12 ID:Py/NZ84y0
彼女はしばらく名刺を見つめて、ふと私をみると、

「最初に見たとき、先生みたいだな、と思ったんです。先生って呼んでもいいですか」

先生という言葉は耳に馴染んでいる。
以下略



62: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:40:42.11 ID:Py/NZ84y0
少女との話はおもしろかった。年齢にそぐわない知識と、しっかりとした判断力をもっていることはすぐに分かった。
まるで大学の研究室の学生たちのように、たくさんのことを質問してくるので、私もつい難しい答えを返してしまうこともあったが、彼女はよく理解しようとしてくれた。
高木の言う「ティンとくる」という訳ではないが、彼女には何か感じるものがあった。こういう場合、高木ならアイドルとしてスカウトするところだろうが、私にはまだそんな事はできないし、どちらかと言えば彼女はアイドルよりも学者の方が似合っているように思った。


63: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:41:40.10 ID:Py/NZ84y0
話に興じている内に、新幹線は富士山を窓側に捉えていた。

「ああ、富士山が見えますよ。私などには見慣れたものですが、やはりいつ見ても美しいものです」

そう言うと彼女は、はっと窓の外を見たあと恥ずかしそうに言った。
以下略



64: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:42:41.93 ID:Py/NZ84y0
そう言えば、私は大柄な方である。横は高木ほど広くはないが、身長はかなりある。小柄な彼女からは、私が富士山に被って見えないのだろう。

「はい、はい。分かりました。」

そう言って窓側の席を譲る。年不相応に落ち着いて見える彼女だが、富士山を見る目の輝きは、まるで小学生の女の子のようだった。
以下略



65: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:44:00.79 ID:Py/NZ84y0
私たちはその後もたくさんの話をした。意外にも彼女は少女漫画を好むようで、鞄には数冊の漫画を忍ばせていた。
私はその内の一冊を借りて少し読んでみた。私は昔から漫画やアニメには疎かったが、最近の若者の流行はこうしたサブカルチャーであるらしい。後学のためにも、と思って読んでみると、なかなか面白かった。
些か性描写が過ぎると思われたが、秋月さんを見ると顔を真っ赤にさせていたので、自覚はあるようだ。


66: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:48:00.18 ID:Py/NZ84y0
驚いたのは、彼女がコンピュータに詳しいことであった。
大学、特に文科型はアナログ志向があり、私が本格的にコンピュータに手を出したのOSWin95からだったが、最近は助教授の水谷がやたらとコンピュータに詳しいこともあって、無駄に知識がついていた。彼女は3.1、DOSさらには8001のN-basicまでと話題が豊富だった


67: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:50:40.50 ID:Py/NZ84y0
また、私などは本体の社名とロゴでありがたがるものだが、彼女は一つ一つのパーツにも気を使うようで、苗字が一緒のあの大手と何か関係があるのかと思ったので聞いてみると、その大手とは違うらしいが、親御さんもコンピュータ関係の店を経営しているそうだ。


68: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:54:47.85 ID:Py/NZ84y0
彼女との会話は実に楽しいものであった。新たな知識を得るには人と語り合うことが最高の手段である、と誰かが言っていたが、新たな知識を得ること、つまり人と語り合うことは私の最高の楽しみの一つであった。

東京に着いたのは9時過ぎであった。これから自宅に帰るという秋月さんの背中はとても小さく、一人で行かせるのもどうかと思ったが、彼女はしっかりしているし、ご両親もそれを分かって一人で帰したのだから、と考え直して彼女とは駅で別れることにした。
「ありがとうございました」と言って背を向けた彼女はやはり小さく頼りげなく見えたが、高木との約束の時間も近いので、私はタクシーを拾うべく出口へと足を向けた。


69: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 06:56:04.91 ID:Py/NZ84y0
新幹線の中まで
終わり


70: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/04/01(月) 22:01:57.13 ID:Py/NZ84y0
test


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