過去ログ - 錆白兵「ここはどこでござるか……」神裂火織「必要悪の教会女子寮ですが……」
1- 20
34: ◆4ipphlbOc2[sagesagga]
2013/05/08(水) 18:35:06.84 ID:ILzqQSnE0
「先程、これは、実用性があると言いましたね、確か」

「いかにも。この刀は、『薄刀 針』は確かに薄く脆弱でござる。だが、完璧な太刀筋を描けばこれ以上ない威力を持つ日本刀でござる」

「…………滅茶苦茶だ」


神裂はその言葉を聴き、頭の痛くなる回答をゆっくり理解しようと


「錆白兵。あなたは本当に剣客を名乗る人間ですか? 向こうが透けて見える程にまで薄い刀で、モノが斬れるとは私は思えない。そもそも完璧な太刀筋など巻藁相手なら修練を重ねれば誰でもできますが、動く敵を斬るのは話は別。零コンマ何秒で筋がズレたり動いたりするからです。それを、完璧な太刀筋で断ち切るなんて至難の技どころか神業です。それがあなたに出来ると言うのですか?」


聖人ならば出来ない事も無いが、いかんせん、“この刀はヤバすぎる”と自分が判断してしまった。手の平と背中が汗でしっとりと濡れている。

この刀は美しいが故に、持ち主に“何か作用する”。神裂はそんな刀を見てきた。

この刀は、持ち主の精神を変貌させる妖刀と呼ばれる刀と同じ類の物だ。

妖刀の類の刀なら幾つか見てきたが、これに勝るものは無かった―――神裂は密かに畏れる。

その反応を見て、錆は、


「無理は無かろう。その刀を手にして、心が動かぬ人間はおらんと拙者は考えるでござる」

「……………」


神裂は思う。

――――この刀はなんなのでしょうか……?

神裂は一人の剣士として、この刀を疑う。

オルソラが口を挟んだ。


「錆さん? 本当にこの刀は、使い物にならないのでございましょうか?」

「否。私は短い期間であったが、その刀を腰に差していたでござる。実用性がないと言うのならば、拙者が実際に何か斬って見せよう」

「それはダメです。店主も言っていたでしょう。この刀、凝って作られてますから価値が高いのですよ、オルソラ。万が一、壊してしまった場合……弁償させられるのは私たちですよ?」

「…………ちなみにどれくらいなのです?」

「私の見込みだと………ざっと数千単位。ヘタすれば億ですね」

「まぁ!」


オルソラは驚愕の額に口を押える。


「まぁ、私は鑑定士ではありませんから、信用しないでくださいね。あくまで過去に見てきた刀の値段と比べると…の話ですが」

「もしそうでも、高値である事は当然でござる。この刀は一本で、国一つ買えるとまで謳われた名刀。ただの刀とはわけが違うでござる」

「一本で国一つ? ―――まぁ、江戸時代や戦国時代の日本なら有り得た話ではありますね。あの時代は茶器一つで国が動いたほどですから」

「しかし、なぜここの店長さんはここまでお金に困っているのでしょうか。騎士団の方々は常連なのでしょう? 英国の騎士団は、ローマ正教十三騎士団よりも千軍万馬の精鋭と聴きます。そんな彼らから度々依頼が来るのなら、そこそこ安定しているのではございませんでしょうか……?」

「確かに、騎士団には良くしてもらっているらしいですが、それでも貧困に喘いでいるそうですよ。何と言ったって、武器、甲冑と言うものはお金と手間がかかります。剣一本造るにしても、今は幾らか近代化して比較的楽に造れるようになりましたが、それでも時間は掛かるとか。そこに魔術的仕掛けを加えるなら、さらに」

「………まじゅつ?」


錆は怪訝な顔をする。


「いえ、こっちの話です。――――ともかく、物騒な物は時間と手間がかかる。しかも、売れなくてはただの物置。戦いに使われなければただの鉄屑。売らなければ剣は剣ではいられませんし、刀鍛冶も生きていけません。実際どんなに業物を大量生産しても、銃社会の今で売れるのは二三本。注文で造るならまだマシですが、それは稀だとか。
しかも、頼みの綱の騎士団からの仕事は皆、安すく済ませる『修理』だと聞きます。武器甲冑を買ってくってのは殆ど無いそうです。最近は平和なのか、それとも騎士団長の教育指導がすこぶる良いのでしょう。
だから騎士団からの仕事だけじゃあ食べていけないという訳です」

「………なかなか世知辛いですね」

「今は不景気ですから」


まぁ、公務員と同等の安定した給料を貰っている神裂とオルソラは彼に同情する事はできないが、心配はしてあげる事はできる。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
415Res/779.30 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice