過去ログ - 錆白兵「ここはどこでござるか……」神裂火織「必要悪の教会女子寮ですが……」
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33: ◆4ipphlbOc2[sagesagga]
2013/05/08(水) 18:34:04.12 ID:ILzqQSnE0
「あの人も困ったものです。自分の得意な仕事ならトコトン出来るのに、その他の苦手分野はトコトン逃げたがる」

「まぁまぁ。いない人の悪口は叩かない方がよろしいのでございますよ」


オルソラは怒る神裂を宥める。と、傍にいた錆が、


「先程から気になっていたのでござるが……。神裂殿、そこの御仁は?」

「ああ、はい。この人は……」

「はい、紹介が遅れました。私はオルソラ=アクィナスと申します。最近、ローマ正教からイギリス清教に移った新参者でございます。錆白兵さんの事は神裂さんから聞いております。私、日本語はこの通り喋れますので、気軽に話しかけてくださいな。なんなら通訳もしますよ?」

「忝いでござる。拙者、気付いたらこの異国にいた身。南蛮人の言葉が解らなかったでござる。オルソラ殿、どうか今後ともよろしくお願いいたす」

「いえいえ、私は神に仕える身。隣人を愛せよ、と言う教えに従ったまでの事。当然でございます。―――時に質問なのですが、なぜ先に来ていたお客様はこんな“綺麗な日本刀”を買わなかったのでございましょうか?」


と、彼女は質問した。彼らの前の作業台には、一本の刀が置かれていた。言わずとも『薄刀 針』である。日本刀の専門家である神裂が応えた。


「それは実用性が無いと見たからでしょう」


その言葉を聞いて、錆は眉をひそめた。


「それは、聞き捨てならんな」

「彼らは戦闘のプロです。そのプロが見て……いや、素人から見ても明らかにこの刀は“薄すぎる”。製作者の意図は何なのかは知りませんが、ここまで薄くする必要が見当たりません。刀身が透けているのですよ? 鉄にせよガラスにせよ、あそこまで薄いと何で出来ているのか目視ではわからない」


神裂は店の中で見た、この刀の刀身を思い出す。確かに綺麗だったが、別の所で危うさがあった。説明は難しすぎて分からないが、ともかく使えぬ刀だという事は解った。


「これでは実用は不可能です。この刀は実戦用ではなく、装飾品としか使い道が思いつきません」

「それは否でござる」


それを否定する錆は先程までとは違って落ち着きいていた。そして申し訳なさそうに頭を下げる。


「先程は取り乱してしまい、申し訳なかったでござる。誠にお恥ずかしい所を見せてしまった」

「いいえ、もうそれは終わった事です。店主【あの人】が、きっとあなたを乱雑に扱ったのでしょ。――――今はこれの事です」


神裂は作業台(今、四人は武器屋の中にある剣を修理する部屋に移っている)の上に置かれた件の日本刀を見下ろす。先程まで抜き身だった刀は、今は鞘に納められていた。


「これを見ても構わないですか?」

「無論。ただし、扱いには慎重に慎重を重ねてくだされ」

「わかってます」


神裂は慎重に鞘で刀を持ち、ゆっくり、ゆっくりと、柄を掴んで白刃…薄刃の剣を抜く。

先程も見た通り、今にも崩れ去りそうなくらい脆く、儚い、そして美しい刀だった。神裂は一人の剣使いとしてその刀を観察する。その中で、第一声は、この刀を見た者は誰もが口にする一言だった。


「……………綺麗だ」


それとほぼ同時――――――神裂の体に異変が襲う。


「――――――――――――――――――――――――――ッッ」


ブワッと、神裂の全身から奇妙で異質な、説明が付きがたい感覚が沸き起こった。

それを、日本で数多の悪魔や妖怪を見てきて、魔術師や呪術師と死闘を繰り広げてきた神裂の体は『毒』と捉え、とっさに拒否反応を示した。

行動としては、すぐに剣を鞘に納め、丁寧に作業台に置く。全身から汗を流しながら、感想…と言うよりは何かから身を守る様に否定の言葉を口にした。


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