2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/04/24(水) 23:43:43.38 ID:eteWpiy10
一方エルヴィン・マストラ甲板上では
「旦那、岸がみえてきやした後三時間もすればサントヘルマンですぜ」
「あぁ、わかった。」
この国では見ない風体の男。船員もその足作りから行商人かきこりの類だとしかわからない。
おそらくは前者であろう。出稼ぎのきこりはその国の者から見てどこの者かわからない格好はしていない。
そのような遠くまでは出稼ぎには出ないだろう。
「さって、今日はいい天気だしゆっくり甲板で昼寝も悪くない」
フードを深くかぶり甲板に寝転がる。
春の日差しと心地よい潮風が甲板を占領していた。
「あっ!こんなところにいたんですね!もぅ探したんですから」
甲板に寝転がる男に少女が声をかける。
「何だ?俺がどこにいようと勝手だし、勝手についてきたのはあんたの方だ」
「そりゃ、そうですけど……今日こそは教えてもらいますよ!あの秘術を!」
「だから秘術でも何でもないって言ってるだろうが。それにアレは一族の秘伝だ他者に漏らすことはできん」
「いいじゃないですか、ケチ」
「いいか、お嬢ちゃん。俺は仕事だからやっただけだ。誰もあんたを助けるためじゃない」
「別にわかってますそれぐらい。あと私は今年で22です。お嬢ちゃんなんかじゃありません。
今年で帝立大学をちゃんと卒業した立派な大人です!」
「自分が子供だといわれてムキになるならそれは子供だと宣言しているのと同じだ」
「なんですか!話をそらさないでください!それにあなたのほうが年下でしょう?」
「さぁ、どうかね?」
むすっと膨れる少女に見向きもせず、甲板に横になったまま男はじっとしている。
その傍で少女もあきらめたように踵を返す。
「そういや、あんたの実家はあの港から近いのか?」
「えっ、ええ山を二つ越えたところですから三日もあれば……今日はあそこで一泊してですから四日後には帰れますね」
「じゃあ五日だな」
「えっ?」
「五日だ、出発は一日遅れることになる。」
「何でですか?」
「嵐がくる」
雲ひとつない空を見上げながら答える男に不思議そうな顔を返す。
だが、この得体の知れない男の言がなぜかあたりそうな気もする。少女は心の端でそう感じた。
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