49: ◆auvPFY1.jw[saga sage]
2013/04/27(土) 11:37:30.08 ID:jHXJVv+b0
「なら…また、今度」
『はい、すみません。誘っていただいて嬉しいです』
『うん、ぼくも楽しみにしているから』
「はい!」
ひとときだけ、ぼくの不安の種は身を潜めた。
…けれど、これは本当にひとときだけだった。
その5日後、ぼくは仕事の呑み会に誘われた。
事務所のみなも、おごりだとわかると声を上げて喜んだ。
彼女らとは私的に出かける機会もないし、こういうときくらいはいい。
ぼくは相席の方と、趣味について語り合った。
ぼくにはあまり趣味がなかったので、困ってしまった。
相席の方は、ぼくのスーツを褒めてくれた。センスがいいと言われた。
みなさん、賑やかでうらやましい。そう言ってくれた。
もちろん。ぼくはみなを尊敬しているし、自慢できるほどだ。
とはいえ、片方ぼくは、いまいち何もないのだが。
ぼくは彼と語り合いをし、酒を楽しんだ。
にぎやかさにもみ消されそうになった声を、ぼくは、聞いてしまった。
…彼氏はいない、と明言する、彼女の姿を。その顔を。
ぼくの不安の種は、華を咲かせた。
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