過去ログ - モバP「夏の上に夏を重ねて」
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52: ◆auvPFY1.jw[saga]
2013/04/27(土) 11:41:06.44 ID:jHXJVv+b0

「最近、よく…先約が」

『…はい』

「それは…つまり」

『…その、通りです…』

『好きな人が、できたんです』

あのネックレスも、もうつけてはいなかった。
彼女の首元は、固くネクタイで結ばれていた。

それが、暗に答えを示していると感じた。

なら、この関係は断ち切ろう。
彼女の口から聞いておきたかったのだ。
ぼくは、最後に1つだけ、彼女にお願いをした。

「事務所のみなと行くときは…よかったら、付き合ってもらえたら」

『はい。それは、もちろんです』

うん。それだけ聞ければ、十分だ。
もうすぐ、夏は終わろうとしている。
…これは、真夏の夜の、夢だったのだ。

ぼくはひとときでも、とても楽しい夢をみた。

永遠の別れというわけではない。
ただ、呑みに行く機会がなくなるだけだ。
けれど、ぼくは、なんだか…それが寂しかった。

8月30日の夜、ぼくは夢を終わらせる。

ぼくはそっとグラスを置いて、彼女との思い出を巡らせた。
苦手な事務作業に手を貸してもらったこと。
勇気を出して彼女を誘ったこと。

1年間、共に彼女と2人だけでやってきたことを。

にっこりと笑って、彼女は付き合ってくれたこと。
このバーに、よく足を運んだことを。
そして、ぼくは言った。

「じゃあ、また、事務所で。さようなら」

彼女も名残惜しそうに、ぼくを見て、言った。

『…はい。ありがとうございました。さようなら』










「社長」

                       おわり




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